日本都市計画学会九州支部 半島空間研究分科会

(主査 プラサンナ・ディビガルピティヤ)

活動内容

国内外に存在する半島の比較を行ったうえで分類し、振興の遅れている要因として指摘される産業その他の要素を整理する。半島には、少子高齢化、過疎化、交通アクセス等の共通する課題があり、地域固有の歴史文化、農林水産業、海と山が迫る半島独特の景観、食文化や祭りなどの資源がある。半島固有の地域資源をいかに保全・活用して地域振興に結びつけることができるか、をテーマとして研究を進めたい。

  1. 日本における半島の都市構造の実態と個性を把握する
    国勢調査や事業所・企業統計等の指定メッシュ統計(昼夜間人口比、集客施設数、年間販売額等)と位置情報データ(駅利用圏半径1km等)を用いて、各半島の都市構造を可視化することにより、集約・拡散のパタンと指標値を示す。また、指標値の半島間比較を行い、半島の産業構造を分類する。さらに、複数の指標の相関関係を見ることで、半島固有の特徴と課題を明らかにする。
  2. 半島振興対策地域の事例を対象として運営手法の実態を把握する
    国土交通省が半島振興対策地域から指定した「半島らしい地域づくり優良事例・奨励事例」にあげられた、団体の組織体制、資金、活動内容、運営の特徴、成果を整理し、半島の活性化を目的とした諸活動の特徴、効果的な運営手法を提示する。
  3. 半島の産業構造類型別に、半島振興法の対象とする選定基準を考慮しつつ運営手法を整理し仮説として提案する。
  4. 半島地域における自治体及び大学等の運営主体、活動団体等への事例ヒアリングにより、仮説提案を検証し、必要に応じて修正を加える。
    1. (1)渥美半島:愛知大学等へのヒアリング
      ・運営主体(三遠南信地域連携研究センター)設立の趣旨、概要、構成、課題
      ・渥美半島地域の振興方策として実施した事業、イベントに関すること など
    2. (2)三浦半島:逗子市、横須賀市
    3. (3)島根半島、能登半島、国東半島、松浦半島等
  5. 得られた知見をもとにとりまとめを行い、半島の振興をテーマとするシンポジウムを糸島で開催する。
    期待される成果
    1. (1)半島を再定義することによりその基準を示し、振興対策を講じる対象を数量化データにより明らかにすることができる。
    2. (2)半島の産業構造類型別の運営手法をもとに、半島振興法の対象でない半島も含む地域のこれからの振興方策を示すことができる。

記録

半島空間研究会 第11回 2020年10月30日(金)

主旨説明

  • 南房総半島を事例として、半島地域が抱える課題を明らかにする。
  • 訪問先 館山市役所
  • メンバー 九州大学 坂井猛教授、プラサンナ・ディビカルピティヤ准教授、博士課程カク訳然。

下記の文書を事前に送付しヒアリングを行った。

1.都市の概要について

  • 半島に位置する館山市特有の条件(地理的条件、文化的歴史的条件)、都市づくりにおける課題、取り組み状況等についてお教え下さい。

2.都市景観の形成について

  • 貴市の基本方針として、(1) 館山の原風景となるふるさとの自然景観を保全、(2) 地域に残る景観資源を活かし、館山のアイデンティティを継承、(3) 個性ある魅力的な街並みを創造、(4) 山らしさを活かしながら、うるおい豊かで心地よいまちづくりとなって推進を掲げておられるが、実現するにあたって、観光資源の活性化に向けた取り組み状況等についてお教え下さい。また、工夫していることなどをお教えください。

3 . 市民の多様な参加を得て良好な景観を形成することを実現するにあたって、それぞれの課題があればお教えください。​

  • 景観計画を策定するうえでの庁内の体制、協議会等についての概要をお教えください。また、課題があればお教えください(他部局との連携における課題など)。​
  • 住民の景観形成に対する意識啓発のためにどのような取り組みを行っておられるかお教えください。

ヒアリング結果​

1.都市の概要について

  • 館山市は、南房総半島の南端に位置し、面積110.05km2、人口約4万6千人の南房総の中心都市である。
  • 東京湾アクアラインや館山自動車道、富津館山道路が開通したことで、接続している国道127号を軸として東京都心からのアクセス性が向上しており、東京都心まで1時間半圏内である。​​
  • 平坦な土地やなだらかな丘陵の谷部に市街地や各集落が形成されており、特に館山湾に面した市街地は安房地域の中心として発展してきた。​
  • 館山市の沿岸部は海抜が0.1mと最も低く、市域東南部の南房総市と隣接するところが171mと最も高い。
  • 海岸線延長は34.3kmを誇り、市域の半分が海に面し、海岸沿いのほぼ全域が南房総国定公園の区域であり、海と緑に囲まれた本市を象徴する豊かな自然景観に恵まれている。
  • 北条海岸、城山公園、伊戸下芝の3ヶ所が「関東の富士見百景」に選ばれているほか、県立館山野鳥の森が「森林浴の森100 選」、平砂浦海岸付近は「白砂青松百選」「日本の道 100 選」にも選ばれるなど、風光明媚な景観資源に恵まれている。
  • 房総里見氏を題材とし曲亭馬琴が江戸時代に著した伝奇小説「南総里見八犬伝」の地として知られ、史跡が多く残されている。
  • 海軍5番目の実戦航空部隊として館山海軍航空隊がつくられたこともあり、戦争遺跡も数多く残されている。

2.都市づくりの取り組み状況について​

  • 館山湾を中心とした市街地では用途地域を定め、そのほとんどが住居系であることから館山湾沿いは低層のまちなみとなっている。
  • 館山駅を中心に商店街が広がっている。特に、館山駅西口では、土地区画整理事業をきっかけに、個性ある住みよいまちづくりを実現するため、地域住民が中心となり南欧風の街並みづくりに取り組んでいる。
  • 「館山港港湾振興ビジョン」に基づく地域振興策として、クルーズ船などの多様な船舶の誘致活動を積極的に展開するとともに、海辺空間を活用したレクリエーション活動を展開している。​
  • 花卉栽培も盛んであるが、来訪者向けのイメージづくりと地域のコミュニティや日常生活における潤いの創出を目的に、町内会や各種団体等と行政が協働して「花のまちづくり」を推進している。

3.都市景観の形成について

景観形成における重要性を鑑みて、以下の6地区を『重点地区候補地区』として位置付けている。

  1. (1)鶴谷八幡宮周辺地区:
  • 八幡地区(鶴谷八幡宮周辺)では、敷地の広い家が多いこともあり、よく手入れの行き届いた槇の生垣の連なりが美しい集落景観が形成されている。
  1. (2)船形バイパス沿道地区:
  • 都市計画道路3・5・13号船形館山線(船形バイパス)の整備が進められている。​
  • 船形バイパスの工事進捗により、今後、沿道景観が大きく変動する可能性があることから、秩序ある景観形成を図るための方針を定める必要がある。​
  1. (3)北条海岸周辺地区:​
  • 館山湾に面しており、夕日に染まる海の美しさから、市民だけでなく来訪者も多く訪れている。​
  • 明治時代から海水浴場として親しまれてきたことから、海辺のリゾートを想起させる街並みが連なっており、隣接する重点地区の館山駅西口地区と調和した景観形成が求められる。
  1. (4)房総フラワーライン沿道地区(平砂浦海岸):​
  • 房総フラワーラインでは、1年中、季節の花が道沿いを彩っている。​
  • 風向明媚な景観は、日本の道100選に選ばれました。・房総フラワーライン・平砂浦海岸周辺では、道路及び海岸からの海への眺望の保全が求められる。​
  1. (5)長須賀地区:​
  • 境川と汐入川に挟まれ、この2つの川と館山湾が形成した砂州に町場が形成され、汽船や列車を利用した東京都の物資流通が盛んである。
  • 人口減少に伴い、建造物の維持・管理が難しくなる恐れがあることから、本地区の街並みの保全が求められる。​
  1. (6)富崎漁港周辺地区:​
  • マグロ延縄船発祥の地として、明治期より漁村風景が形成されている。​​
  • 当地区では、長年、小谷家住宅の保存活動と並行して、地域住民が主体となり、景観を活かした観光の視点でのまちづくりに取り組んでいる。​

4.市民参加に関して​

  • 市街地内の狭隘道路を対象として、地域住民の理解と協力のもとで、避難路の確保及び緊急車両の通行を可能とするための拡幅整備等について検討している。​
  • 館山銀座商店街については、地域住民の理解と協力のもと、本市の主要交通結節点である館山駅との連携と来訪者の誘導に必要な施設整備及び方策について検討している。
  • 市街地における身近な緑の創出のため、地域住民の理解と協力による植栽等の沿道景観整備を進めるほか、社寺林や屋敷林等の適正な維持管理を促進する。
  • 館山銀座商店街などの中心商店街については、地域住民の理解と協力により、魅力的な商業空間の形成を図るために、建築物の形態・意匠の統一、商店街のイメージに合った色彩の採用等について検討している。

5.観光に関して​

  • 館山港:多目的観光桟橋や渚の駅の整備に併せ市内外の人々の交流や観光拠点として魅力の増進を図ることで、都市全体及び周辺地域の活性化を図る。​
  • 船形漁港・下原漁港・富崎漁港:漁港機能の向上や水産物直販施設等の整備により 、地域の観光漁業の拠点形成を図ることで 都市全体及び地域の活性化を図る。
  • 伊戸だいぼ工房周辺:地域の観光資源を活用し、観光拠点としての魅力の、向上を推進することで、都市全体及び周辺地域の活性化を図る。
  • 城山公園周辺:市立博物館との連携や周辺に点在する歴史・文化資産の活用を図り、人々の交流の場として、また、観光拠点としての魅力の向上を推進する。
  • 沖ノ島公園周辺:風致を維持し、都市環境の保全を図るとともに園内の森や磯を活用し、 人々の交流の場として、また、観光拠点としての魅力の向上を推進する。
  • 館山運動公園周辺:周辺の自然環境と調和した、人々の憩いゆとりの場、として活用を促進することにより、利用者の自然環境に対する保全意識の高揚を図る。

6.移住定住について

  • 都心からのアクセスの良さに加え,豊かな自然に触れることができることから,本市への移住や二地域居住を検討する人も増えている。​
  • 移住後のライフスタイルの希望を伺うと非常にバリエーションが多く,そのバリエーションに答えられるポテンシャルがある。
  • 釣りをするためだとか,自然を見ながらのんびりしたいだとか,中には漁業や農業に従事したいだとか、色々な望みを持って移住される方が多い。​
  • 移住される方の世代について、各世代に広くなっており,若い移住者も多い。​

半島空間研究会 第10回 日時 2020年3月5日(木)

主旨:伊豆半島調査により半島地域の抱える課題を明らかにする。​

メンバー:(九州大学)坂井猛教授、プラサンナ・ディビガルピティヤ准教授、博士課程カク訳然​

1.都市の概況

伊東市は、静岡県の最も東端、東京から約100kmのところにある。面積は約124km2で、市域の約45%が「富士箱根伊豆国立公園」に指定される風光明媚な地域で、古くから城ヶ崎海岸や大室山、一碧湖等の景勝地で知られ、温泉保養地として親しまれてきた。1960年頃から、自然環境に恵まれ高原状台地に別荘分譲地やゴルフ場、レクリエーション施設等の開発が進み、現在では日本有数の別荘地・リゾート地域となっている。 ​

  1. (1)人口​
  • 伊東市の人口は73,631人、総世帯数は34,772世帯(2011年3月31日) で、人口は減少に転じており、高齢化が着実に進展していますが、世帯数は増加傾向にあり、核家族化が進行している。​
  1. (2)歴史・文化​
  • 伊東温泉の歴史は古く、江戸時代初めには御前湯として将軍家に献上したり、紀州の殿様が入湯した記録がある。明治後期から掘削によって温泉区域が拡大し、大正から昭和にかけて松川沿いに別荘も増えた。また、機械掘りができて温泉は周辺にも広がり、伊東線の開通、温泉旅行大衆化の波に乗って、全国屈指の湧出量を誇る伊東温泉が栄えました。昭和30年代に温泉が湧出し、別荘やペンションが急増した。一方、温泉が湧出する地域では、地震の影響も大きく受ける。 ​​

2.ヒアリング(都市計画課まちづくり推進係)

  1. (1)都市づくりにおける課題や取り組み状況​​
  • 伊東市独自の土地利用事業指導要綱等により、適切に誘導している。しかし、市街地周辺の大規模マンション等が建設され、住環境や景観が大きく変わる等、適切に誘導しきれなかった事例もある。
  • 用途地域外に在来集落や別荘分譲地が多いこともあり、用途地域内に必要な道路等の都市基盤施設整備が遅れている。​
  • 用途地域外の一部には無秩序な市街化が進行している区域は、計画的な都市整備の推進を妨げ、市の自然環境や景観を阻害している。
  • 中心市街地の都市計画道路網整備の遅れは、商業の停滞等、都市活力の低下を招いているので、市内の自動車交通量は減少していくとの予測もあり、実情に合わせた都市計画道路網の整備が必要である。​
  1. (2)都市景観の形成について​
  • 伊東市景観条例を柱に、伊東市景観形成基本計画及び伊東市景観計画に基づいて施策を推進している。
  • 市民や事業者は、良好な景観形成を推進する主役であり、そのために、行政は良好な景観形成の先導的役割を担うとともに、情報発信、市民活動支援及び景観法の活用により、市民や事業者の景観形成活動を支援している。
  1. (3)観光資源の活性化に向けた取り組み状況
  • 観光プロモーションと情報受発信機能の強化:「リラックスできるまち・いとう」としての伊東市の観光プロモーションを積極的に展開している。また、観光客のニース等を把握するとともに、効果的に情報を発信していく仕組や体制を整備する。​
  • インバウンド観光の推進:今後拡大が見込まれる外国人観光客の市場に対応するため、受け入れ環境の整備や人材の育成、海外向けマーケティング活動等のインバウンド観光施設を全市的な視野から展開している。​
  • 推進体制の構築:市民参加の推進や観光関係団体を始めとする各団体、民間事業者等の連携、広域連携による事業の推進等のかつ効果的に推進するための体制を構築する。​

半島空間研究会 第9回 日時 2020年3月2日(月)

主旨:丹後半島調査により、半島地域の抱える課題を明らかにする。​​

メンバー:(九州大学)坂井猛教授、プラサンナ・ディビガルピティヤ准教授、博士課程カク訳然、(G計画デザイン研究所)尾辻信宣​​

1.概況

  1. (1)地勢​
  • 丹後地域は、京都府の最北部に位置し、宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町をエリアとし、面積は約845km2で府全体の約18%を占めている。天橋立、伊根湾、経ヶ岬、夕日ヶ浦など、貴重な地質遺産を有するとともに、東側は丹後天橋立大江山国立公園、西側は山陰海岸国立公園に指定されている。
  1. (2)歴史・文化​
  • 日本海三大古墳をはじめとする古墳が残され、「丹後王国」として繁栄したとされている。丹後七姫、浦島太郎、徐福など数多くの伝説や民話が伝承されている。​
  1. (3)産業​​
  • 農林水産業、織物業、機械金属業などの産業が発展してきた。豊かな食の宝庫と言われるほど、丹後産コシヒカリやブランド京野菜・果物、間人ガニや伊根ブリ、丹後とり貝など産物がある。
  1. (4)人口
  • 圏域の総人口は97,424人(2015年)で、全国や京都府の平均を上回る少子高齢化が進行しており、特に100歳以上の長寿者の割合は府平均の2倍となっている。​​
  1. (5)生活基盤​​​
  • 京都縦貫自動車道や舞鶴若狭自動車道の全線開通、山陰近畿自動車道の京丹後大宮ICの開通により、京阪神・中京圏へのアクセスが向上している。​
  1. (6)地域の将来像(概ね20年後に実現したい姿)〜安心して「元気」に住み続けることができ、希望が持て夢が実現できる丹後地域〜​
  • 「安心・安全な地域」:大規模自然災害等にも対応できる地域強靭化の取組が進み、誰もが安心して健康に生き生きと住み続けることができる「安心・安全な地域」​
  • 「稼げる地域」:観光、ものづくり等の地域産業や農林水産業などの基幹産業が更に発展するとともに、新たな産業が創造される「稼げる地域」​
  • 「誰もが活躍できる地域」:丹後に住み、関わる一人ひとりがそれぞれの力を発揮しながら地域産業やコミュニティを担う「誰もが活躍できる地域」​​​

2.施策の基本方向(概ね4年間の対応方向)

  1. (1)住み続けることができる安心・安全な地域づくり​​
  • 地域産業の営みや人々の暮らしの下支えとなる、災害に強い安全な地域、安心して元気に住み続けられる地域づくりを推進​
  1. (2)稼ぐ力の強化による産業振興​
  • 観光産業の振興を入口としながら、地域に根付く織物業や機械金属業等ものづくり産業や農林水産業などの基幹産業全体のさらなる発展に取り組み、稼げる地域づくりを推進​​
  1. (3)地域を支える人材の確保・育成​​​
  • 稼ぐ力の源泉となる人材の確保・育成を進めることにより、さらに地域全体が活性化する好循環を実現するため、誰もが活躍できる地域づくりを推進​
              

3.ヒアリング(宮津市役所都市住宅課:石田都市計画係)​​

  • 宮津市は、市域を天橋立を中央に陸地としては北と南に分かれていて、天橋立の砂州でつながっているのが特徴。そういったことが全てに影響し、天橋立の観光業や景観施策が中心となっている。
  • 大都市圏から離れた場所にあり、自然が豊か。反面、産業は特筆するものはなく、天橋立を中心とした観光業で成り立っている。開発圧力もそれほど無い。近年は外国人観光客が増えている。​
  • 景観計画を2008(平成20)年に策定し、2017(平成29)年に溝尻集落重点景観形成ゾーンを加えて改定している。計画策定は、京都府が主導しているのが実態だが、地元行政職員や住民は賛同している。​
  • 外部資本による開発でも、景観計画を尊重し、また地元に配慮している。景観協議も確認申請前の事前相談のときに行なっている。​
              

4.現地調査​

  • 日本海に面したいわゆる裏日本地域であり、自然が豊かで、可住地が少なく、冬の厳しい気象、などで過疎地域の典型的な様相を感じた。​
  • 自然の景勝地や歴史的資源に着目した地道な観光業は着実に実を結んでいる。「天橋立」や「伊根の舟屋」を中心とした観光産業は、半島地域・過疎地域の成功例として参考となる。​
  • 「丹後ちりめん」をはじめとした伝統工芸品はバラエティに富んでいる。九州から見れば、丹後半島は京都市や大阪など古くからの都に近く、「宮津」や隣の舞鶴は江戸時代に盛んであった『北前船』の寄港地でもあったことが影響していると思われる。​​
  • こうした豊かな自然環境や歴史・伝統を大切にしつつ、固有の文化を育み、適度な経済活動を進め新たな出会いを取り込む寛容な地域社会が形成されている。​

半島空間研究会 第8回 日時 2020年2月24日(月)

主旨:絵鞆半島を事例として、半島地域の抱える課題を明らかにする。​​​

メンバー:博士課程カク訳然​

1.概況​​

  • 慶長年間(1600年ころ)松前藩が、アイヌの人と交易をするため、絵鞆場所(えともばしょ)を開き、運上屋を置いたのが始まりとされ、以来、函館~森~室蘭~札幌を結ぶ札幌本道の整備や、室蘭~岩見沢間の鉄道敷設、室蘭~函館~青森を結ぶ、定期船の就航などにより、本州と北海道を結ぶ海陸交通の要衝として発展してきた。​

2.現状及び課題​

  • 絵鞆半島は、半島振興法の対象にはなっていない。現在では、港を囲むように、日本製鉄株式会社 、株式会社日本製鋼所、JXTGエネルギー株式会社などの工場群が立地しており、北海道を代表する重化学工業・港湾都市である。太平洋に面する外海側は、100メートル前後の断崖絶壁が続き、「北海道の自然100選」で第1に選ばれた「地球岬」などの雄大な自然あふれる景勝地を数多く有する。​

3.現地調査より​​

  • 公共交通について、絵鞆半島の観光スポットを路線バスで周遊することができるが、本数が少ないための待ち時間のロスがあり不便である。
  • 夏には、半島外の観光客が訪れるが、冬季には半島外から訪れる人は少ない。

半島空間研究会 第7回 日時 2020年2月23日(日)​

主旨:積丹半島を事例として半島地域が抱える問題を明らかにする。​​​

メンバー:九州大学坂井猛教授、プラサンナ・ディビガルピティヤ准教授、博士課程カク訳然

1. 概況​

積丹地域は、北海道の西部に位置し、北西の日本海に向かって約50km突き出した半島であり、その大部分を山地が占め、半島先端部の余別岳、積丹岳を始めとする1,000m級の山が連なるほか、急傾斜地が海岸近くまで迫っており、海岸延長が165kmに及ぶその美しい景観は、ニセコ積丹小樽海岸国定公園に指定されている。また、これらの海岸線に集落が形成され、半島基部では低地、台地が広がっているなど一大果樹生産地となっており、気候は、対馬海流の影響により、周辺地域に比較して冬期は暖かく、積雪量も低地では少ない。本地域は、江戸時代からのニシン漁により、北海道の中では早くから開け、明治期には商業活動で発展し、茅沼炭鉱が開発されたほか、岩内町に北海道初の水力発電所が建設されるなど、北海道開拓の拠点として栄えた歴史がある。半島振興法(昭和60年法律第63号)第3条の規定に基づき、積丹地域の自立的発展、地域住民の生活の向上及び定住の促進並びに国土の均衡ある発展に資することを目的として、積丹地域半島振興計画を定めている。​​

2.現状及び課題

農業や水産業の第一次産業を基幹とする産業構造であるが、これら産業の経営規模は比較的小さく、担い手不足や高齢化の進行に加え、安価な輸入産物の増加等に伴う価格の低迷など、本地域の産業を取り巻く環境は一段と厳しさを増しており、また、他の産業についても地域内での雇用の場は少なく、若年層を中心とした地域外への人口流出など、多くの課題を抱えており、地域社会の活力の低下が懸念される状況にある。

  • 昭和35年以降の国勢調査人口の推移をみると、全道人口では平成7年をピークに減少しているが、本地域ではそれを上回る減少率となっている。​
  • 年齢階層別人口の推移をみると、29歳以下の人口が著しく減少傾向にあるのに対し、65歳以上の人口は増加傾向を示しており、急速な高齢化の進行などによる年齢構成の偏りがみられる。​​
  • 産業別就業人口の推移をみると、第一次産業就業人口の減少が顕著であり、また、基幹産業の低迷などに伴い、昭和35年から平成22年までの間における就業者総数が55%程度にまで減少している。

3.振興の基本的方向及び重点とする施策

  1. (1)基本的方向

  1. 本地域は、余別岳や積丹岳などの1,000m級の山々や変化に富んだ長大な海 岸線など、美しい景観に恵まれているほか、北海道開拓の拠点として早くか ら栄えた歴史がある。また、スイカ、さくらんぼ、りんご、ぶどうなどの野菜や果樹、エビ、ヒ ラメ、アワビなどの水産物等、豊富な農水産資源に恵まれている。 これら本地域のもつ歴史や文化など、さまざまな特色を生かし、だれもが安心して暮らせる、個性豊かな魅力あふれる地域社会の形成をめざすとともに、住みよい地域環境を整備し、計画期間内において人口減少の進行を緩和することができるよう、本地域への定住の促進に向けた振興を図る。目標として「彩り豊かで活力に満ちた、魅力あふれる積丹半島の振興」を掲げ、その方向として以下をあげている。






  • 安心でゆとりと潤いのある地域づくり
  • 特色ある地域文化の創造、地域を支える人づくり
  • 活力ある農林水産業の振興
  • 地域資源などを活用した特色ある地域産業の展開・創出
  • 地域の特色を生かした観光・レクリエーションゾーンの形成
  • 地域内外を結ぶ交通・情報ネットワークの形成
  • 交流人口拡大に向けた取組の推進
  1. (2)重点施策

  1. 本地域における現状及び課題を総合的に踏まえつつ、本計画の基本的方向の実現に向け、本計画期間内において、次に掲げる施策を重点的に推進する。目標として「彩り豊かで活力に満ちた、魅力あふれる積丹半島の振興」を掲げ、その方向として以下をあげている。


  1. ①交通
  • 北海道新幹線全線の早期完成・開業の実現​
  • 高規格幹線道路網の整備促進​
  • 災害時を想定した体系的な広域交通ネットワークの形成​
  1. ②産業
  • 収益性の高い地域農業の確立​​
  • 農業・水産基盤の整備と地域資源の保全​
  • 多彩な観光資源を活用した観光交流空間づくりの推進​
  1. ③地域間交流
  • グリーン・ツーリズムの推進などによる都市と農山漁村の交流促進​​​
  • 高速道路開通による交流人口拡大に向けた取組の推進​

4.現地調査より

  • 観光資源としての岬が各所にあり、それらを繋いで半島をまわる道路整備が進んでいる。​​​
  • 半島を周回する道路には、高規格で新しいトンネルが多い。冬季の強風日にはシェルターとしての役目を果たす。​
  • 半島の人口減少を反映して、集落はまばらであり、人口5.5万人、人口密度41人/km2(0.4人/ha)は、全国平均343人/km2(3.4人/ha)と比較すると極めて低い。​​
  • 冬季には、北海道を訪れる観光客は札幌から小樽、余市までであり、半島外から訪れる人は少ない。​
  • 半島西部古宇郡泊村には、北海道電力の原子力発電所が立地し、地域の基盤整備に寄与している。​​​

糸島半島部会 第3回 日時 2019年3月26日火曜16:00

主催 日本都市計画学会 半島空間研究分科会
主査 プラサンナ・ディビカルピティア
記録 郝訳然(かくやくぜんhaoyr492@nenu.edu.ch)
日時 2019年3月26日火曜16:00ー17:30
場所 九州大学伊都キャンパス中央図書館セミナー室

主旨説明 坂井
九州大学学術研究都市推進機構 横内次長より、九州大学学術研究都市構想の事業方針に関する説明ののち、意見交換を行った。

  • 遠いという印象は、郊外移転のイメージとセットだった。空港から40分なのにみんな八王子の中央大学をイメージしてしまう。ので、なぜ都心回帰の時代にこんなことをするのか、という意見になる。
  • MICEの集めている統計もその多くは九州大学が開催するものが多い。
  • 10年後の事業は見込めないので、3年サイクルで回す。
  • 水素の自動運転など未来型の実証に乗り出す必要があるだろう。
  • 留学生は2500人おり、これに加えて外国人研究者も増えている。国際化対策は急がれる。
  • コンテンツをたて、常に切り口を明確にしていく必要がある。

糸島半島部会 第2回 日時 2019年2月13日火曜16:30

会場(変更後) さいとぴあ2階 203室(OPACKの隣)

内容

1.これまでのおさらい

  • これまでの経緯について、資料に基づき坂井より報告を行った。

2.赤星氏より

3.研究発表

前回に引き続き、研究内容の報告と意見交換を行った。

  1. (1)大学移転に伴うキャンパスと周辺環境の形成に関する研究(丁震宇)
  2. (2)景観行政団体による景観誘導手法の運用実態に関する研究(進藤卓也
  3. (3)半島におけると観光産業の立地と公共交通網の整備に関する研究(吉原優)
  4. (4)糸島半島におけるレクリエーション都市「居住型レク系ほたる」の開発課題に関する研究(今井毅)

4.意見交換

半島研究に関して以下のような意見交換を行った。

  • 自家用車、レンタカー、自転車をどのように位置づけるか、次の段階で考えるべきであろう。
  • 半島は、海との関係も問われる。
  • 紅葉狩りやサンセットライブなどの季節的な資源も位置づけるとよいだろう。

5.その他

  • 次回は九州大学学術研究都市推進機構の取り組みについて聞くこととした。

糸島半島部会 第1回 日時 2019年1月22日火曜16:30

主催 日本都市計画学会 半島空間研究分科会
主査 プラサンナ・ディビカルピティア
記録 郝訳然(かくやくぜんhaoyr492@nenu.edu.ch)
日時 2019年1月22日火曜16:30ー18:30 18:30―有志で会費制懇親会。
場所 公益財団法人九州大学学術研究都市推進機構セミナー室
〒819-0367 福岡市西区西都一丁目1番27号 MJR九大学研都市駅前1F

主旨説明 坂井

半島空間研究分科会は、均衡ある国土発展に寄与する半島の在り方を探る研究会です。これまで、三浦半島、国東半島、渥美半島等を題材に、考察を重ねてきました。この分科会に「糸島半島部会」を立ち上げ、九州大学伊都キャンパスを核とする学術研究都市の発展をふまえた今後の糸島半島の在り方から環境整備まで、これまでのことを確認しつつ、今後の方向性を明らかにしていきたいと思います。

1.糸島市の九州大学連携まちづくりについて、糸島市大鶴係長から概要説明の後、意見交換を行った。

  • 人口減少に歯止めをかける突破口として九州大学連携を位置づけており、地方創生の中で産業振興、地域の活性化を図る。
  • 現状の集積度を上げていくことや、教員や住民の居住を増やしていきたい。
  • 糸島半島全体の発展を同じルールでできないか。
  • 既存建物の用途変更や危険家屋をなくしていく仕組みづくりが急がれる。
  • ビジネスとして成立していくための制度の枠組みを再考する必要もある。

2.糸島半島に関連する4人の研究発表を行った。

  • 糸島半島におけるレクリエーション都市「居住型レク系ほたる」の開発課題に関する研究(今井毅)
  • 半島におけると観光産業の立地と公共交通網の整備に関する研究(吉原優)
  • 景観行政団体による景観誘導手法の運用実態に関する研究(進藤卓也)
  • 大学移転に伴うキャンパスと周辺環境の形成に関する研究(丁震宇)

3.その他

  • 次回は、赤星健太郎氏の取り組みを伺うこととした。

糸島部会 第0回 日時 2018年12月27日木曜16:00

場所 伊都キャンパス・イースト1号館1階 EA105

1.主題解説 1時間

  1. (1)これまで半島空間研究会の概要について、研究会主査のプラサンナ准教授から説明があった。
  2. (2)キャンパスと糸島半島の現況、学研都市構想、糸島市サインスパーク、学研通り線沿線等の開発について、について、坂井教授、山王助教から説明があった。

2.意見交換 1時間

今後検討する事項について協議し、以下をとりあげることとした。

  • 九州大学学術研究都市推進機構の計画
  • 糸島市のプロジェクト
  • 福岡市のプロジェクト
  • 交通
  • 住環境アンケート
  • 観光レクリエーション、魅力づくり
  • 研究プロジェクト

2018年12月27日 糸島半島部会を開催

第6回 2018年7月17日(火)

  • 国東半島を事例として半島地域が抱える問題を明らかにする。
  • 訪問先 2018年7月17日(火)国東市役所
  • メンバー

九州大学 坂井猛教授、プラサンナ・ディビカルピティヤ准教授、博士課程カク訳然、修士課程吉原優、修士課程進藤卓也
佐賀大学 有馬隆文教授
大分大学名誉教授 佐藤誠治
国土交通省 赤星健太郎

ヒアリング内容

1.都市の概要について

  • 半島に位置する国東市特有の条件(地理的条件、文化的歴史的条件)、都市づくりにおける課題、取組状況等について。

2.都市景観の形成について

  • 景観計画の基本理念について。
  • 都市計画マスタープランと景観計画を一体的に策定するために工夫していること。

3.国東らしい特徴を持った美しいまちなみを育てること(賑わいの空間創出、自然と調和した快適な生活環境を確保することの具体的な内容について)

4.市民の多様な参加を得て良好な景観の形成を実現するにあたって、それぞれの課題

  • 景観計画を策定するうえでの庁内の体制、協議会等についての概要と課題。
  • 住民の景観形成に対する意識啓発のためにどのような取組を行っているか。

5.良好な自然環境を有する丘陵地や海岸線は文化財、史跡が数多く存在しており、これらの地域固有の資源の維持・保全とともに観光資源活性化に向け取組状況等について。

内容

  • 景観計画について2年かけて原案を作ってきた。
  • “豊かな自然”等は考慮しているが“半島である”ということ自体はあまり考慮していない。
  • 神仏習合による神社と寺がもたらす景観は歴史的観点から非常に重視している。
  • 山から海までの距離が近く、雨水がすぐに海に流れてしまうため水利条件はあまり良くなかった。そのため、溜め池や用水路が発達し、現在では“世界農業遺産”としての認定を受ける程となった。
  • 700m級の山から約28本の谷筋が放射状に延びており、交通インフラやまちの空間構成もそれに沿ったものとなっており、谷筋を跨いだ移動に課題を抱えている。
  • 外周を移動する鉄道路線も考えられてきたが、災害などの影響により実現できずにいる。
  • 一方で、山の上層には、谷筋を跨ぐ形でのオレンジロード(みかん)が形成されている。
  • 狭隘な谷筋に囲まれた地形は、お坊さんの修行等には適しており、歴史・宗教的な観点からはプラスに働いてきたとも考えられる。
  • 主要な経済拠点としては、大分空港の輸送メリットもあり、ソニーやキャノン等の製造業が立地している。
  • これらの企業には、別府や大分、ひじ等から就業者が集まっており、昼間人口増大の要因となっている。
  • 以前は、“しっとうい(畳の材料)”が主要な産業であり、東京オリンピックの畳や宮崎駿氏のアニメにも採用された。
  • 都市計画マスタープラン(建設)と景観計画(観光)ははじめから連携して作成されたため親和性の高いクオリティになっており、大分市等もプロセスを参考にした。

市民参加に関して

  • まだ計画完成ではないので、市民との連携はこれからである。
  • まずは行政から住民へ、国東の良いところをPRしていく予定である。
  • ワークショップでの意見を反映させたりしていくプロセスもこれからである。

観光に関して

  • 1300年の歴史がある六郷満山に伴うイベントを催している。
  • 海岸というよりも山地の方でうまくいっている。もっと海岸沿いも活かしたい。
  • サイクリングターミナルを設置しており、ツールド国東としてPRしている。
  • 福岡から自動車で来て周遊する人が多い。
  • 山歩きのトレッキングコースもある。
  • 外国人観光客も増えている。
  • ゴルフ場には特にインバウンドの韓国人等が多い。
  • 道の駅として、サイクリングターミナル、海浜公園、空港、があるが、一つ一つが小規模。
  • 地形を活かしたロングトレイル。
  • 国東市や豊後高田市には険しい山道等の非日常要素もある。
  • 谷筋に沿う公共交通はバスだが、本数は少ない。バスツアーも検討している。
  • 福岡の日本銀行前に国東のアンテナショップを出店している。(国東、豊後高田、姫島での連携)
  • 複数の地域で連携してアンテナショップを出店している事例は珍しく、地方創生の一環として注目を高めており、ショップを通してバスツアーにも活かされている。

後談

  • 国東の景観的な良さを見せるために、パノラマ景観を重視しており、ドローンを使って俯瞰的に撮影している。パノラマとしての景観を重視している事例も珍しい。
  • 原風景、季節ごとの風景等、時間軸を意識していきたい。
  • 日本風景街道として、別府湾岸街道など県下4か所が認定されている。
  • “しっとうい”という産業のための神社2つあり、祭りもあるが珍しい事例である。
  • “しっとうい”は、より安価で作りやすい“いぐさ”にとって代わりつつある。
  • 国東は4市での“対等合併”である。
  • 類似した計画等が複数あっても仕方ないので、今後どのように整理していくか。
  • 最近では、しだいにヒエラルキーも生じているが、もともと対等合併であるがゆえに、どこに庁舎が立地するか等の問題もあり、28年2月にできて、それから計画を作成したため、少し遅れている。

2018年7月17日 国東半島を視察し、国東市を訪問しヒアリングを実施しました。

第5回 日時 2018年3月1日 10:00

会場 逗子市役所(逗子市まちづくり景観課 2F)

参加者

  • 九州大学 坂井猛教授、博士課程カク訳然、修士課程進藤卓也
    佐賀大学 有馬隆文教授
    国土交通省 赤星健太郎

ヒアリング内容

1.都市の概要について

「・半島に位置する逗子市特有の条件(地理的条件、文化的歴史的条件)、都市づくりにおける課題、取り組み状況」逗子市:面積=17.34km2 人口=5万7,868人(2013年)世帯数=2万4,089世帯
海・山・川の自然三大要素が生活圏に揃っている
東京まで1時間圏内で始発電車があり通勤に便利
逗子市は、神奈川県の東部、三浦半島の付け根に位置し、鎌倉市、横浜市、横須賀市、葉山町と境を接しています。北、東、南の三方を丘陵に囲まれ、西の相模湾に向かって開けた形をしています。
1889(明治22)年に横須賀線が開通するとまちは保養地として栄え、海岸沿いには松並木に囲まれた別荘建築が建ち並びました。その後、逗子の景観は短い期間で大きく変化してきました。それは、逗子のまちづくりの歴史、発展の歴史と言えますが、一方で、景観破壊の歴史という側面もあります。1964(昭和39)年、東京オリンピックの開催にあわせ国道134号線が建設され、それまで住宅地と連続していた逗子海岸が隔てられました。
1989(平成元)年には多くの人に親しまれた渚ホテルが解体されました。もはや、旧い別荘建築はほとんど残っておらず、住宅地は小さく分割され密集化が進んでいます。緑は減少し、昔は豊かな松林だった逗子海岸周辺に残った松はごくわずかです。河川はコンクリート護岸となり、遊べる場所は少なくなりました。
逗子のまちなみが過去に大きく変わってきた要因には、経済発展や人口増加などの都市機能の拡充がありました。

2.都市景観の形成について

「・景観計画の基本理念」1.逗子の自然の特徴である海、川、緑豊かな丘陵地による景観の保全に努めること、2.逗子の歴史、文化等の資源を生かした景観をはぐくむこと、3. 逗子らしい特徴を持った美しい街並みをそだてること、4.市民の多様な参加を得て良好な景観を形成すること。

「・景観計画の基本目標」
1. 緑の保全と創出
2. 海辺の景観の魅力向上
3. 河川の親水化と緑の保全
4. 眺望景観への配慮
5. 歴史的資産の維持継承
6. ヒューマンスケールの街並み形成
7. 周辺と調和した建築物等の形態意匠
8. 色彩を意識した街並み形成
9. 都市施設(道路、河川、公園等)の景観の向上
10. 市民による景観まちづくりへの支援

路地のまちなみ

逗子には、車が通ることが困難な狭い路地が多く存在しています。路地を歩くと逗子のまちの良さを実感することができます。路地は車が少なく高齢者も子どもも安心して歩くことができます。低層の住宅地の生垣や屋根の向こうには緑の丘陵を眺められ、市内を蛇行して流れる川が路地と一体になり、周辺環境を豊かにしています。路地は最も親しみやすい、貴重なコミュニティスペースだといえます。

家とみどりの風景

丘陵に囲まれているため、逗子の景観は自然と切り離せません。勾配屋根は風土に適していると同時に、ふと見上げたときに山の稜線と調和している風景が心地よく感じられます。低層のまちなみは、日当りや風通しの良い居住環境をつくっています。 暮らしが生きるまちなみ まちなかに住民が集えるパブリックな公園が数多くあることが望ましいのですが、市内にそれほど多くないのが現状です。しかし、それを補うように川岸や路地の脇に設えられたベンチや井戸などが見られます。これらの多くは、個人が私有地を開放した事例です。こうしたスペースが少しずつ増えることで、まちなみにゆとりが生まれます。

3.逗子らしい特徴を持った美しいまちなみを育てること

逗子の景観を構成している一番大きな要素は住宅です。住宅を建ててしまった後から、外構のしつらえを自分で工夫しようとしても、なかなか手がつけられない、という人は多いはず。桜山に住む山崎さんと岡部さんは、市の助成事業を利用して、実際に家の外構の緑化をしました。2008年にほぼ同時に越してきて以来、家族ぐるみのおつきあいだという両家が同時に沿道緑化をすることで、連続性のある景観が生まれました。

4.市民の多様な参加を得て良好な景観を形成すること)を実現するにあたって、それぞれの課題。

「・景観計画を実施するうえでの庁内の体制、協議会等についての概要と課題」
逗子市景観審議会委員構成:学識経験を有する者(4名)市民(5名)
逗子市景観条例第36条に基づき、以下の事項を所掌するため「逗子市景観審議会」を置いています。
1.景観形成についての基本的事項又は重要事項を調査、審議すること。
2.景観形成に関する事項について、市長に意見を述べること。
3.景観法第3章第1節に規定する景観地区における認定が必要な行為に対し、市長に意見を述べること。
「・景観計画を作成時から、体制面や制度面で変化した点と景観形成にあたりその効果検証を実施。」
「・住民の景観形成に対する意識啓発のためにどのような取り組みを行っておられますか。また、どのような取り組みが意識啓発において効果的でしょうか。」
景観アドバイザー、景観サポーター等の制度により、市民による景観まちづくりを積極的に支援する。

環境美化の活動

市民と行政が恊働で進めるまちの美化プログラムのひとつに「アダプト・プログラム」があります。逗子では、小坪のボードウォークや亀ヶ丘バス停前の花壇などの手入れをしているのが道路アダプトに関わる方々です。
自分たちの暮らす地域をきれいにしたいという思いから始まるアダプト活動、どちらも道行く人を和ませてくれる、景観の美化活動です

歴史的建造物を保全

桜山の盧花記念公園の一角にある旧脇村邸は、昭和9年に建てられた和洋折衷の別荘建築。国の登録有形文化財及び逗子市景観重要建造物に指定されています。現在、邸宅内部は一般公開されていませんが、毎週風を通し、補修や掃除、庭の整備を続けているのが旧脇村邸アダプト。建物保全だけでなく、逗子の自然環境を育む場所でもあるようです。

教育とまちなみ

ほととぎす隊景観部会でも、小中学生を対象に した「まちづくり学習塾」を開催した経験があります。「身近なまちなかを歩いて遊び場を発見して、作文や模型にして発表するワークショップです。

第4回 日時 2017年11月23日月曜10:00

会場 九州大学

参加者

  • 坂井猛教授 九州大学
  • プラサンナ准教授 九州大学
  • 有馬教授 佐賀大学
  • かく訳然 九州大学坂井猛研究室博士課程1年
  • 進藤卓也 九州大学坂井猛研究室修士課程1年

活動内容

  • かく訳然氏の論文「GISデータを用いた半島空間の人口動態と産業構造の変遷に関する研究」に対する講評。
  • 平成30年度 新規研究分科会計画提案書の作成。

第3回 2017年9月14木曜日13:00

ヒアリング報告書①

日時 2017年9月14木曜日13:00-14:30
会場 国土交通省 国土政策局地方振興課 半島振興室

参加者

  • 赤星健太郎専門官 ご担当の立場から。
  • 坂井猛教授 九州大学
  • かく訳然 九州大学大学院人間環境学府博士課程1年

主旨説明:1.振興法により振興対策地域の現状分析が講じられている。
「半島振興計画案の概要」—23振興対策地域の現状と課題、振興施策及び地域の有する資源とその活用の方向を説明し、今後の半島振興地域の計画のポイントを示す。
「半島振興対策地域現況分析調査業務報告書」—最新の統計データを活用しながら半島地域の現況や振興施策の実施状況について多角的・客観的に把握・分析するとともに、モデル的な地域経済分析を実施する。
「人口減少下での地域づくり」—特に志摩市の人口動向の特徴と都市計画の変遷を示す。

2. 都市構造のデータの可視化を説明する

日本全国の人口の経年変化と空家の数等のデータが詳しくになる
ヒアリング報告書②
日時 2017年9月14木曜日 15:30-17:30
会場 株式会社ジェイクリエイト

参加者

  • NPOフォーラム自治研究理事長 嶋津隆文 
  • 坂井猛教授 九州大学
  • かく訳然 九州大学大学院人間環境学府博士課程1年

主旨説明:「半島文化の広域的発信」と「越境的な大学連携」を考える
背景と課題:半島衰退、半島振興法の混迷!

  • ハード助成の限界、ソフト振興への期待
  • 地域活性化の半島文化の内発型展開に着目

内発型展開とは、 注:「自立的発展」(半島振興法)

①住民自身の手による営み(役所のカネに依存せず)
②身近な資源を評価・再創造する営み(東京の一般論に拘泥せず)
今次、着眼した視点とは、
①「農的」発信:持続可能社会での自然と「農的暮らし」の意義発信
②「文化」発信:地域文化、半島文化の誇りとプレゼンスの全国発信
③新ライフスタイル発信:人生90年時代、成熟時代での新たなライフスタイル、ビジネススタイルの発信
目的:半島振興法施行30年。行き詰まりが懸念される中で、半島文化(ソフト)による地域活性化の可能性を検討する。
方法:半島としての地勢、人口、産業などの類似性から、渥美半島を軸に九州の松浦半島(とくに北松浦半島)に着眼した。そして両半島での文化活動のいくつかの先行事例を取り上げ、その地調査をもとに比較検証を行い、半島文化の可能性を検討する。

1.半島文化の「内発的展開」例について

渥美半島ケース:1)「渥美半島の風」社中、 2)「どろんこ村」の活動
松浦半島ケース:3)肥前窯業田協議会、 4)まつうら党交流公社
これまで「内発型展開」といえる文化活動の中から、地域の将来を展望できる幾つかの共通要素を以下の様に取り出すことができたものと考える。それは半島の活性化だけでなく、住民の人生90年時代のライフスタイルの指標にもなりうるものとも思料する。
第1の「内発的展開」の不可欠な要素は、面白いことしたいとの市民意識である。外部への発信で、新鮮な知的なインセンティブを持てるようになる。
第2の要素は、半島文化を誇りとしようとの自負である。海と農の生活こそ、暮らしの根源との自信がそこには垣間見える。
第3要素は、外からの風(よそ者)は有効だとの視点である。よそ者の持つ目線や体験の広さは無視できない。
半島文化の「内発型展開」を支える要素であり、半島の「文化」発信や「農的」発信を支えるキーワードとして、以上の3点を指摘することができるものと考える。

2 半島文化の越境ネットワーク

本来的に言えば国土交通省の半島振興室などがこれらの活動のコーディネートとデータベース化作業を行っておかしくない。しかし「実質担当人数2.5人の実情では困難です」と半島振興室はいう。そこで注目すべきは大学の存在である。
渥美半島の上記の文化活動でも、そのプロモーターや協力者は愛知大学などの地元大学人である。松浦半島でも長崎国際大などが関与している。地元大学はその新たな半島文化のポテンシャルとその発信作業をサポート(内的サポート、外的サポート)する機能を既にそれなりに果たしている。次の課題はこの化関与方法をさらに発展する形で、大学のつながりを活用しての地域交流の越境ネットワークを形成することがあってよいのだ。
半島文化への大学の関与とは
①内的サポート
地域振興、半島振興に「外からの風」 (借報、チエ)は有用?
地域での大学(大学人)の存在はタスクフォース機能を持つ
②外的サポート
半島文化の諸活動を発掘発信する機能-付加価値の翻訳機能
半島文化のデータベース化とネットワーク化する機能-媒介機能
半島文化(地域振興)研究での、越境連携・大学連携の可能性
--ネットワーク化のハブ組織は国土交通省か大学か?
--三遠南信センターは全国のデータハブ機能を持てるか?
例:地元の団体⇔ 大学(コア) ⇔ 全国大学 ⇔ 全国の団体

第2回 日時 2017年8月24日 10:00

会場 愛知大学三遠南信地域連携研究センター(愛知大学豊橋キャンパス 本館2F)

参加者

  • 戸田敏行センター長、小川勇樹助教 ご担当の立場から。
  • 坂井猛教授 九州大学
  • 有馬隆文教授 佐賀大学
  • かく訳然 九州大学大学院人間環境学府博士課程1年 会議を記録。

主旨説明

三遠南信地域連携ビジョンについて一般的な知識と課題 戸田センター長

1.現行ビジョンの確認

  • 県境地域を対象とする、現行ビジョン(以下ビジョン)策定および三遠南信地域連携ビジョン促進会議(SENA)の設置は、全国でも特徴的な取り組みである。一方、県境(広域ブロック境界):を跨ぐビジョンの諸事業は行政機関の境界域に位置するために、多くの事業推進にSENA組織が中核とならざるを得ない面がある。
  • SENA組織自体の主要事業としてば社会的企業人材、人財育成円卓会議など人材育成に関する取り組み:地域資源のネットワーク化を進めてきた。これらは、今後の人口減少等に対応する基本的な活動である。

2.三遠南信地域の地域構造

  • 地域構造を形作る基盤整備としては、三遠南信自動車道をはじめとして、近1 0年間でかなりの進展をみたと言える。特に、リニア中央新幹線の開通計画や新東名の開通は長期的な地域構造変化をもたすものであり、現在の国土形成計画で示されるスーパー・メガリージョンにおける三遠南信地域全域の方向性を明確にすることが必要である。こうした中には、リニア中央新幹線と相反的な側面を持つ東海道新幹線の将来像を含めた連携計画化が不可欠である。

3.重点プロジェクトの展開

  • 三遠南信地域全体のプロジェクトを共有しながら、具体化が進展しやすい小地域での事業組み合わせや、広域性を持ちやすい事業(道の駅のネットワーク等)の組合せが有効である。このための情報共有、特に事業を担う行政、民間、市民団体の担い手の交流はSENAの重要な機能と考えられる。
  • 近年の地方創生事業では、大半の市町村が似通った分野の取り組みを始めており、移住定住、:農商工連携、ビジネスマッチング、:人材育成、:婚活等の共通性が高い。これらの広域化は、:政府政策との関連においても有用である。

4.次期ビジョンに向けた留意点

①超広域地域(スーパー・メガリージョン)での三遠南信地域の戦略化(基盤づくり)

  • リニア中央新幹線の全域的効果拡大、飯田線など既存鉄道活用、東海道新幹線の新利用
  • 道路体系(三遷南信道路体系、豊浜環状道路体系)の行政計画位置づけ

②人口構造変化等に対応する長期的な基本事業の促進(くらしづくり)

  • 小地区での生活を確保する医療福祉、改廃が予測される公共施設等の効果的利用連携
  • 大規模災害-の対応、森林など水源地の環境保全

③ 実施先導事業を選定した重点化(ことづくり)

  • 地方創生事業の連携化(移住定住、農商工連携)、ネットワーク化を図りやすい既存事業の抽出(道の駅ネットワーク、観光、文化など)
  • 小地域越境事業の起案と促進

④人財育成と交流の確保(人づくり)

  • 行政人材、産業人材、地域人材の広域的交流・研修事業と体制の創也
  • 地域-の愛情を形成する地域教育の構築

⑤ 県境を越える恒常的連携組織の設置(場づくり)

  • 県境を越える事業の立案・促進母体としての三遠南信広域連合
  • 産学官団体の連携組織,体制の構築

第1回 日時 2017年5月1日月曜18:00-19:00

会場 九州大学伊都キャンパス ウエスト1号館D303

参加者

  • 赤星健太郎専門官 ご担当の立場から。
  • 有馬隆文教授 佐賀大学
  • プラサンナ准教授 九州大学
  • かく訳然 九州大学大学院人間環境学府博士課程1年 これまでの研究成果と問題意識をプレゼン。
  • 進藤卓也 九州大学大学院人間環境学府修士課程1年 会議を記録。
  • 坂井猛教授 九州大学

1.主旨説明  坂井

  • 半島を巡る一般知識と課題を把握することを目的とする。今後随時メンバーを強化する予定である。

2.半島研究のこれまで かく訳然

  • 対象として、三面を水面に囲まれ人口10万人以上かつ面積10,000㎢未満の半島を対象とした分類を試みた。
  • 半島を形,面積,人口により区分し,それぞれの市街地の広がりや人口変化を追う

3.半島行政を巡る一般的な知識と課題 赤星専門官

  • 国土の均衡ある発展を図るという考えに基づく半島振興法により振興施策が講じられている。
  • 昭和60年(1985年)に制定され、10年間の時限立法だが、これまで3度の延長が行われている。
  • 豪雪地などの条件不利環境にある半島の発展と定住促進などを目的としている。
  • 対象地は、各都道府県知事の申請などに基づくため,選定基準は必ずしも明確ではない。

4.意見交換

  • 半島をどのように定義するかを再度整理する。
  • 規模の異なる半島を比較すること、で一般的な半島としての知見が得られるのか。
  • 半島振興法の対象地としても、新しい基準が求められるのではないか。
  • 各都道府県により元気がない半島の振興申請が行われているが,なぜ元気がない状態になっているのかを知る必要がある。
  • 観光においては,半島は、メニューの一部となって埋没してしまう。
  • 産業を基本として,他の要素と組み合わせて現状を探るのが良いのではないか。
  • 世界中の半島の比較から,糸島などこれからの半島づくりに活かしていきたい。
  • ペニとは隆起するという意味であり,イギリスにはペニがつく地名なども多い。
  • 川でも湖でも,水面であれば海と同様に半島の定義づけに当てはめることができる。
  • 配布資料に半島団体リストなどもあるため活用できる。