九州大学新キャンパス Kyushu University New Campus
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資料集新キャンパス委員会による成果

元岡古墳群E群の取扱いについて 平成12年1月21日

平成12年1月21日
 新キャンパスにおける埋蔵文化財の現地踏査は、福岡市教育委員会によって平成7年2月から実施されている。九州大学では、それまでの現地踏査及び試掘調査結果の報告を受け、平成9年7月30日に「九州大学新キャンパス基本構想における埋蔵文化財の取扱い方針」を将来計画小委員会で決定した。平成10年5月26日に評議会決定した「新キャンパスの土地造成基本計画」は、この方針を反映したものである。

 福岡市教育委員会は、平成8年3月から発掘調査を開始し、平成11年9月29日に「元岡古墳群E群」の調査結果の報告がなされ、11月2日の新キャンパス計画専門委員会で同群の発掘調査についての教育委員会による説明がなされた。ここで、「元岡古墳群E群」は、踏査では2基の円墳と推定され、「取扱い方針」において言己録保存とされているが、今回の発掘調査により、新たに、前方後円墳1基、円墳2基の計3基の古墳であることが判明した。

 九州大学では、調査結果の報告及び説明を受けて、学内の専門家にその取扱いについて検討を依頼し、平成11年12月16日に別紙のような意見が提出された。こうした一連の経過を踏まえ、古墳3基のうち、前方後円墳1基の学術的価値は高いものの、後世の破壊により保存状態が悪いこと、保存活用のための復元及びその後の保守に多大な費用と労力を必要とするとの専門家の意見を踏まえ、「元岡古墳群E群(前方後円墳1基、円墳2基)」については、記録保存として取り扱うものとする。

■元岡古墳群E群について
 元岡古墳群E群は、標高60mの丘陵上に位置し、4世紀の前方後円墳(1号墳)・円墳(3号墳)、6世紀前半の円墳(2号墳)の3基からなる。1号墳は全長35mと推定される前方後円墳で、後円部に埋葬施設(粘土櫛)を設け、方格丁字文鏡1面を出土している。2号墳は横穴式石室をもつ直径13mの円墳で、3号墳は粘土梯をもつ直径9m強の円墳である。

 これらのうち円墳については家長層の墓と考えられるが、前方後円墳については、墳形・規模・副葬品ともに桑原地区の金屎古墳と同程度の古墳であり、元岡地区の小首長墓という評価を下すことができる。したがって、その学術的価値は高く、原則的にはキャンパス予定地内の他の首長層の古墳と同様に、現状で保存することが望ましいと考えられる。

 しかし、これらの古墳はいずれも後世の破壊によって、墳丘および主体部の多くが破壊されている。とくに1号墳は後円部墳丘の一部を残すのみであり、主体部も粘土榔および鏡が副葬されていた棺床の一部のみが残っている状態である。また、墳丘の流出が激しく、保存活用するためには相当の墳丘を復元する必要がある。また、現在のキャンパス造成計画の中でこれらの古墳を保存すると、周囲から20m弱の高さにこれらの古墳が残されることになるが、古墳が築造された丘陵自体が狭く、勾配も急であるため、安全を考慮すると相応ののり面をつける必要がある。

 以上のように、これら古墳群、とりわけ1号墳の学術的価値は高いものの、後世の破壊が甚だしく保存活用には相当の復元が必要となること、保存後の安全のためには相当の保守工事が必要であることなどを考慮すると、記録保存を検討することもあるいは必要かと考える。

 なお、これらの古墳の調査は4月に開始されており、墳形確認や副葬品の検出から本学への報告までには半年以上が経過していると思われる。今後も今回のような当初予期しなかった遺構が発見されることが予想される。学術上重要な遺構については現状保存を考慮する必要があるが、対処が遅れるとキャンパス計画へも重大な影響を及ぼしかねないことから、発見・検出段階での報告を福岡市教育委員会に求めるべきであると考える。

平成11年12月16日
大学院比較社会文化研究科 田中 良之
文学部  宮本 一夫
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