九州大学新キャンパス Kyushu University New Campus
新キャンパス計画キャンパスと周辺地域移転情報資料集
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資料集新キャンパス委員会による成果

新キャンパスマスタープラン
イーストゾーンの第20次調査地及び石ヶ原古墳等の取扱いについて 平成13年3月1日

平成13年3月1日
 平成10年5月26日に評議会決定された「新キャンパスの土地造成基本計画について」(以下「造成基本計画」)に基づいて、開発の対象となる区域の埋蔵文化財の発掘調査が鋭意進められるとともに、大気環境・水環境・土壌環境・生物環境など環境への影響の評価が行われてきた。後者については、「九州大学新キャンパス統合移転事業環境影響評価準備書」の作成と現地説明会、福岡県知事の意見への対応を踏まえて、平成12年2月18日の将来計画小委員会において「同評価書」が了承され、4月21日の将来計画小委員会において学外者を含む「新キャンパス環境監視委員会」が設置された。

 また、ゾーニングおよび移転順序についても検討が進められ、平成11年7月27日の将来計画小委員会において、「アカデミックゾーン内のゾーニング」と「移転順序」が正式に了承された。さらに、平成12年2月18日の将来計画小委員会において、新キャンパス計画専門委員会で決定・承認されてきた事項を包括的に整理した「九州大学新キャンパスマスタープランの基本的考え方」が了承された。

 他方、「新キャンパスのマスタープラン(案)」の作成を九州大学と共同して行うコンサルタントが、WTO政府調達協定に基づく公募型プロポーザル方式によって選定され、平成11年11月30日に、三菱地所(株)、シーザペリ・アンド・アソシエーツ・ジャパン(株)、(株)三島設計事務所の3者によるMCM設計共同体と正式に契約した。その後、学内で設置された「新キャンパスマスタープラン策定プロジェクトチーム」とMCM設計共同体とで「新キャンパスのマスタープラン(案)」の策定作業が本格化し、その作業経過をもとに「新キャンパス造成基本設計第Ⅰ工区(案)」が平成12年3月21日の評議会で了承され、6月2日第Ⅰ工区の造成工事が本格着工された。

 キャンパス予定地内の埋蔵文化財については、平成8年11月11日に福岡市教育委員会から試掘調査に基づいた「埋蔵文化財調査の中間報告」がなされ、これをもとに学内外の専門家の意見を聴取したうえで、平成9年7月30日の将来計画小委員会において「九州大学新キャンパス基本構想における埋蔵文化財の取扱い方針」(以下「取扱い方針」)が決定された。ここでは、5つの前方後円墳、2つの中世山城および石ヶ元古墳群のうち17基を現状保存とすることになった。石ヶ原古墳については、「キャンパスの造成にとって技術的に不可欠な位置にあることから、徹底調査のうえで記録保存する」とした。しかし、その後決定された「造成基本計画」において、造成区域(イースト・ゾーン)内の土量バランスの必要から石ヶ原丘陵を残し、丘陵北部の谷を埋めて文系キャンパスを展開する計画となった。

 「造成基本計画」策定後の埋蔵文化財の発掘調査によって明らかとなった古墳等の取扱いについては、新キャンパス計画専門委員会のもとに設置された「文化財ワーキンググループ」での検討を踏まえて、平成12年1月21日に「元岡古墳群E群の取扱いについて」、5月23日に「元岡遺跡群(第7、12・15次調査地)の取扱い、古墳の保存方法について」がいずれも将来計画小委員会において了承された。

 その後、平成12年10月17日に福岡市教育委員会から、イースト・ゾーン内の元岡遺跡群第18、20、21、22次調査地についての中間報告がなされた。このうち、第20次調査地からは、古代の役所跡であることを強く示唆する遺物・遺構が検出されており、高い学術的価値を有する遺跡である可能性が強いとの評価が「文化財ワーキンググループ」によってなされた。この地区の調査はなお継続されており、平成14年中にも最終的に報告されるものとみられる。この区域は、「造成基本計画」において文系キャンパスの中核的位置を占めることになっている。しかし、本調査区の遺跡の学術的価値を考慮すれば、この区域をキャンパスの中核として本格的な開発の対象とすることは適当でないと判断せざるをえず、この区域の遺跡の保存のあり方を含めた土地利用は、最終報告の結果を待つのが妥当である。他方、箱崎・六本松キャンパスの統合移転の趣旨を生かし、21世紀の世界レベルの研究・教育活動の基盤としての本格的キャンパスを構築するには、イースト・ゾーン内に、これに代わる新たな区域を開発対象とせざるをえない。

 こうした観点から、将来的な拡張の余地を含めた十分な敷地の確保、センター・ゾーンおよびウエスト・ゾーンとの一体性、南に開かれるというキャンパスのもつ開放性などを重視し、「取扱い方針」で一旦は造成の対象となりながら、「造成基本計画」では土量バランスなどにより造成の対象から外した石ヶ原丘陵について、「新キャンパスのマスタープラン(案)」では削平したキャンパス計画とする。しかし、その場合にあっても、今後の埋蔵文化財の調査の展開によって「石ヶ原古墳の学術的評価が以前にもまして高くなる」との「文化財ワーキンググループ」の見方を考慮すれば、石ヶ原古墳については、単純な記録保存ではなく、「現状保存に可能な限り近いかたちでの対処法を検討する」ことが不可欠となる。また、石ヶ原丘陵の削平に伴い、相当量の切土が発生するが、造成基本設計において用地内処分による搬出土砂の低減をはかるとともに、キャンパス外への搬出について検討を行う。

 本マスタープラン(案)は、「今後段階的な新キャンパスの施設整備を展開する」ための全学的かつ長期的な指針であり、世界的レベルの研究・教育拠点の形成にふさわしい未来型キャンパスを構築するには不可欠である。

 今後、本マスタープラン(案)を基に、地区別基本設計や建物実施設計、造成設計を進めることになる。

 イースト・ゾーンにおける、第20次調査地谷部の遺跡保存を含む土地利用、石ヶ原古墳の保存方法、今後の埋蔵文化財の発掘調査、土砂のキャンパス用地内移動およびキャンパス外搬出のあり方、さらに追加的な環境影響評価など新たな情報・状況を踏まえて、詳細に検討したうえで、造成基本設計案を作成し、学内審議に付するなど、必要な手続きを行うものである。
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