九州大学新キャンパス Kyushu University New Campus
新キャンパス計画キャンパスと周辺地域移転情報資料集
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資料集新キャンパス委員会による成果

交通計画に関連する今後の課題とその取り組みについて 平成13年12月

 新キャンパスの交通計画については,九州大学新キャンパス・マスタープラン(平成13年3月)の策定と平行して事務局で検討を進め,本年7月の新キャンパス計画専門委員会でその内容を報告したところである。その要点は以下のとおりである。
  • 新キャンパスへの教職員・学生の通勤通学における潜在的な駐車需要の検討を行ったところ,約4,700台と推計され,新キャンパスの通勤通学用駐車容量の3,200台を大きく上回ることがわかった。
  • 自動車利用を抑制する方策として,公共交通を充実する一方で,駐車料金の賦課によつて,駐車需要の低減するのが効果的であることがわかった。しかし、駐車需要は低減できたとしても、朝のピーク時における集中のために、入口交差点と周辺道路の混雑緩和を図る必要があることがわかった。
  • キャンパスの段階的な拡大を考慮しつつ,各段階での問題点とそれに対応するための施策メニューの整理を行った。
 以下では,マスタープラン策定後、移転過渡期の交通計画を対象とする交通計画WGで,検討を重ねてきたことをまとめ,新キャンパスへのアクセス・通勤通学交通手段の確保・交通の円滑化・適正化のために,全学的な対応を図るべき項目についてをあげている。

 「大項目(かっこ書きの標題)」は,いずれも交通計画WGにおいて優先度が高く,全学的に検討の必要があるとの結論に達したものであり,「小項目(丸数字)」は,その採用を行うにあたり,今後,担当の所管を決めて検討すべき項目である。

 別紙1には,上記の小項目を交通計画WGとして取り組むべき項目と,その他の検討チーム等にゆだねるべきものとに区分し提案した。これらの中には,早急に全学的な取り組みを開始すべき項目があると考えられるため,ここに,これらの項目の検討の必要性と担当に関して審議をお願いするものである。

 なお,交通計画の方策は,別紙2のように,対策の目的と手法が必ずしも1対1に対応するものではなく,その効果は多岐にわたるものが多い。また,ある方策の内容によっては,道路,駐車場等の整備水準や,バスの運行頻度等に影響を及ぼすので,役割分担の決定後も学内で十分に連携をとりながら検討していくことが必要であると考える。

 最後に,この提言では,交通計画WGに与えられた役割である「移転過渡期の交通計画」の立場から,新しい視点での交通システムに関しては,検討の必要性を強調するに止めている。しかしながら、WGでは,新しい交通システムの導入が本学の発展にとってきわめて重大な意味を持つと考えており,ここに,新しい交通システムに関する全学的検討の必要性を改めて申し述べる次第である。
(1)公共交通機関の利便性の向上
 公共交通重視型のキャンパスという理念は,本学が環境重視を標樺する上からも極めて重要である。その実際に対し,本学がどのように対処するかが,内外から問われている。

 移転過渡期を考えた場合,公共交通機関としてはバス交通及び鉄道・地下鉄との併用が現実的であるのでこれにより交通解析を行った。これまでの予測では朝ピーク時のバス輸送力が不足する可能性があり,このままでは,マスタープランの理念を実現できないばかりか,通勤通学に支障をきたし、大学の活力低下を招く恐れがあった。そこで,バス会社との協議を始め,現実的な輸送力の把握検討を始めたところであるが,以下の(3)で詳述する交通需要のピーク平準化の取り組みによっては,必要なバス台数は大きく変わってくるので,その問題も並行して検討することが不可欠である。

①バス運営の大学からのサポート(バス便数の増大,深夜運行の確保等)
 大学側から,バス便数の増大や深夜運行の確保のためのサポート(運行経費の一部負担など)を検討する。

②バスルートの多様性の確保(都心向け高速バス等)
 JRの各駅発や都心向け直行高速バス等,多様なニーズに対応できるバスルートの確保が必要である。

③バス案内システムの導入

 バス発着の予定時刻や現在位置等を表示する案内システムを導入する。これは,バス停以外の人が集まる場所にこそ導入を図るよう検討すべきである。

④学内へのバス乗り入れ
(排ガス・騒音等環境対策を含む)
 乗り換えを行うことへの抵抗感,歩行距離の低減など利用者の利便性を向上させるため,公共のバスが学内を通過する形で導入を図る。その際,環境保全の観点から,ディーゼル排ガスの浄化や新たな動力源の採用(環境配慮型・低騒 音型等)を要請していく。

⑤JR線の利便性の強化

 通勤時間帯の本数の増強や深夜までの便数確保など,利便性の強化が必要である。

⑥新しい視点での交通システムの導入検討

 新しい視点での交通システム(LRTやガイドウェイバス,未来型の交通システム等)の導入ができるかどうかの成否は,キャンパスの質にかかわる問題である。したがって,長期的あるいは将来的な課題とせず,導入に向けて早急に 全学による意思の統一と対外的な取り組みに着手する必要がある。
(2)キャンパス及びその周辺の居住地確保
 交通計画における前提条件として,キャンパス内学生寮(2,000人)やキャンパス直近に約3,000人,計5,000人の大学関係者が居住することを想定した。これは,新キャンパス人口(現員数約18,000人)の約28%に相当し,自動車交通の発生の抑制に大きく貢献している。

 当初に移転する工学系地区の研究教育の特徴(継続的実験研究等)を考慮すれば,より早期の居住地整備による利便性の確保が必要であり,結果的にそれが交通問題の補完にもつながると考えられる。

①質の高い居住環境の創出
 大学周辺の住宅供給に際しては,単に学生向けの住宅供給を行うという視点ではなく,長期的居住や永住といったニーズにも対応できる教職員等にも対応できる,快適で質の高い居住環境を整備していく視点が必要である。今後のまちづくりに関しては,大学からの地元への働きかけが必要であるが,その裏付けとなる時系列的・定量的な誘導目標の設定が必要と考えられる。

②移転初期の居住ニーズへの対応
(寮,周辺まちづくり)
 移転の初期には,学生・教職員向けの住宅供給は進んでいないものと考えられるが,それを補う何らかの方法を検討することは,学生や教職員の居住地とともに利便性を確保することになり,大学移転をスムーズに行う上で大変重要である。
(3)交通需要の平準化への取り組み
 1時限目の講義数 履修者数が多いため,新キャンパスへの流入交差点で著しい交通混雑が発生する恐れがあることが交通解析により判明した。しかしながら,自動車に関しては,所属する地区やゾーンによって利用する入口交差点を指定し交通量を分散させることで,混雑を緩和できることが確認できた。ただ,今後,社会から大学への生涯学習,社会人教育といったニーズへの対応や大学のさらなる活性化を考えると,大学施設の24時間化・年中無休化等,新しい形のキャンパス・ライフ・スタイル実現に向けた動きは必然的に出てくるものと思われる。それらに柔軟に対応するためには,授業カリキュラムの集中を避け,時間的に分散させていくこと、具体的には休日や長期休暇期間の活用等といった視点も必要になると考えられる。対応次第では,学生・教職員の一定期間・一定時間への集中を平準化でき,大学施設(講義室,会議室,食堂等福利厚生施設,等々)が有効に利用されることにもなり,結果的に交通ピークが平準化されうる。  また,大学の目指すべき研究教育のあり方を考える意味では,ITを活用した学習スタイルについても検討を進めていく必要があり,それもまた,大学施設や交通量に関しての 準化に資することとなる。

①カリキュラムの平均的配分等による交通ピークの平準化
 新キャンパスにおいては,1時限日の講義数を減少させ,実際には講義が少ない4・5時限目に回すなどすれば,朝ピーク時における交通混雑の緩和をはじめ,施設の有効利用を図ることが可能になると考えられる。

②フレックスタイム・時差出勤の導入

 教職員向けには,フレックスタイムまたは時差出勤の導入が望まれる。

③学習スタイルの検討

 移転期間中及び移転完了後も複数のキャンパスにまたがった教育活動は避けられない。これは教員にとってかなりの負担となり,教育研究活動の障害となる可能性がある。教育の質を落とさず,こうした事態に対応するためには,ITを活用した教育システム(遠隔講義や在宅受講等)の検討が必要である。
 そのような教育システムの現状把握も含めて,望ましい時間割のあり方,教育スタイルを検討する会議を設置し,大学の運営に反映する取り組みが必要である。
(4)歩行者・自転車利用者への支援
 九州大学新キャンパス・マスタープラン2001(平成13年3月)では造成の工夫により,自転車・歩行者の移動に配慮したものとしているが,それにあわせて,建築設備における垂直・水平方向の移動のアシスト(支援)が必要である。具体的には,公共交通機関の学内への乗り入れを行うとともに,学内バスや動く歩道,エレベーター,エスカレーター,自転車用のベルトコンペアー(降りて乗せるスロープのコンペアー)などの導入が必要である。これは本学が目指すバリアフリーのキャンパスづくりにも資するものである。

①学内循環バスの導入
 新キャンパスの施設間相互の移動や大型駐車場から各施設への移動利便性,共同研究などによる移軌学内の防犯・安全性を併せて確保するため,学内の循環バスの導入が必要である。環境保全の観点から低公害車の採用を検討する。

②キャンパス接続バスの検討

 キャンパス間移動の利便性を確保するため,キャンパス接続バスの検討を行う。

③歩行者・自転車利用者への垂直・水平移動支援施設の導入

 学内バスの循環や,公共のバスの学内乗り入れと合わせ,上述したような水平・垂直両方向の移動支援を行うことが必要である。これは,新キャンパスのバリアフリー化にも資することとなる。

④駐輪場の適正配置
(センターゾーン南側や建物周りの駐輪場の配置検討)
 自転車利用者の利便性を考えると,比較的低い位置にある南側敷地(3号調整池周辺)や建物周りでの駐輪場の確保も検討の必要がある。

⑤アシスト付き自転車のレンタルステーション

 駐輪場の一部をアシスト付き自転車のレンタルステーションとして活用することは,来学者を含む学内移動の利便性の向上とともに自転車の不法廃棄の減少にも資すると考えられ,検討が望まれる。
(5)駐車場管理運営システムの導入(PFIの活用)
 駐車場の課金についても検討を行い,これによって自動車需要をコントロールすることが可能であることが分かった。
 しかし,現在のキャンパスは,交通の利便性が高い地区にあるにもかかわらず,課金は行われていないため,新キャンパスで課金を開始するのは,利用者に対して抵抗が大きい。また,開校後1,2年の段階では通勤通学者も相対的には少ないので,バスの利便性が確保されているとも限らない。したがって,移転当初からの課金は避けるべきであろう。しかし,第2ステージ(移転4年目以降)が始まると,駐車需要の低減が必要と考えられるため,課金の実施時期等については更なる検討が必要である。
 また,駐車場用地は建物の足下には非常に少なく,大型駐車場から各施設までは道のりで最大1,400mの距離がある。このため,ICカード等で車両の区別をしたうえでの利用駐車場別の料金設定や,駐車場からの移動支援等,管理・運営方法の検討が今後の課題である。
 また,課金という手段とあわせて自動車利用を制限,抑制する手法としては,駐車場容量に合わせた入構許可カードの発行(発行総数を制限)や,学年別の自動車利用制限等が考えられる。ただし,学年ごとの特性に考慮し,規制を行う場合も学生の利便性の要求には応えうる制度でなければならない。たとえば,広島大学では,課金とともに,低学年(1,2年生)を対象に原則自動車利用制限を実施しており,これは,本学の場合も新キャンパスにおいては,低学年は授業の場所が比較的交通利便性の高いセンターゾーンに集中していることから効果的な方策であると考えられる。
 なお,さらに,駐車場入口での利用登録者の判別をどのように行っていくかなどを技術的観点から検討していくことも必要である。

①公共交通の利便性向上と適正な自動車総数抑制手法の導入
 (1)で述べたように公共交通の充実は,新キャンパスの必須事項であるが,その充実に併せて,適正な自動車総数の抑制方策を検討していく必要がある。

②違法駐車対策

 駐車料金の賦課などにより自動車利用は低減するが,駐車場を利用せず路上駐車をする学生・教職員も出てくる恐れがある。
 公共交通機関の充実を一層図るとともに,さらに,違法(路上)駐車を排除するため,キャンパス内の巡回,違反金の付加など,違反に対しての厳重なペナルティーを検討する必要がある。

③駐車場案内システムの導入

 駐車場の「満・空」表示を行うことは,駐車場の空き探しのために学内幹線道路上が大混雑するといったことを避けられるとともに,来学者に利便性をもたらす。

④センターゾーンの活性化に合わせた駐車枠数の増大
(立体駐車場の検討等)
 特に来学者向けに利便性が求められるセンターゾーンの活性化の程度によっては,その近辺に立体駐車場を検討し,駐車枠数を増大することも考慮すべきである。

⑤サービス車両の登録制度や料金撤収

 サービス用車両(物流,営業等)の駐車スペースが,無料の場合は学生・教職員が悪用する恐れがある。そこで,サービス用車両についてもその利用について登録制度をとるなどの工夫が必要と考えられる。

⑥交通解析の詳細化,ビジュアルソフトの開

 これは,交通流動をシミュレーションし,ビジュアル化して把握するもので,学内での施設整備の合意形成や道路管理者(市役所),交通管理者(公安委員会・警察)との協議にも資する。

⑦PFIの導入

 新キャンパスに集中する自動車需要に対して様々な施策が考えられるが,これらの施策を実施するためには,管理や運営方法などについてさらに詳細な検討が必要である。総合的な管理・運営の方法としては学内だけでの対応にとどまらず,PFIの導入も視野に入れて検討を進める必要がある。
(6)段階的拡大への対応
段階的移転に伴う交通需要の伸びに対応し,検討すべき項目は多岐にわたる。
以下にその代表的なものを列記する。

①大学の建築工事や周辺開発をにらんだ交通対策
大学の建築工事が行われている期間は,その一方で,学園通線の工事,周辺のまちづくり,下水道やガスなどの埋設等に伴い多数の工事用車両(機材の搬出搬入,作業員の通勤,土砂運搬)が発生することが予想される。そこで,これらの動向を一元的に把握し,統制の取れた工事・交通管理を行う必要がある。
また,移転が段階的に進められることを考慮すると,検討すべきものを時系列的に整理し,きめ細かく臨機応変な対応ができるようケーススタディも必要である。

②暫定的な駐車場利用

移転の途中段階では,建築未着工用地があるので,これらを一時的な駐車場用地として活用することが考えられる。なお,『未来のポテンシャル軸』は,マスタープラン2001で来学者向けの駐車場用地と位置づけている。

③交通実験モデル地区としての新キャンパス

新キャンパスにパーク・アンド・ライドやノーマイカーデーなどの施策や,地域コミユーターの導入,燃料電池・電気バスの導入といった交通実験を取り入れることにより,学術研究都市の中心的役割を果たすことが望まれる。

④大学内道路の取り扱いと信号の設置,交差点改良

大学から発生集中する交通量を適切に処理するためには,交通需要の平準化の取り組みを考慮しながら各交差点の整備レベルを決定していく必要がある。また,朝と夕方で信号のタイミングを変えるなどの信号制御も適切に行っていく必要がある。
なお,信号の設置に関しては,交通管理者(県公安委員会)等との協議が必要である。大学の要望通りのスケジュールで信号が設置できるかも含めて早期に協議を行つていく必要がある。

カーシェアリングシステムの導入(共同所有のレンタカー)
キャンパス接続バスは,移動のニーズにきめ細やかに応じた輸送頻度の確保は困難であると予想される。このためキャンパス接続バスを補完する位置づけとして,業務(連絡・授業)目的に活用するカーシェアリングシステムの導入が考えられる。
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