九州大学新キャンパス Kyushu University New Campus
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資料集計画案関係

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造成基本計画 平成10年5月

新キャンパスの土地造成基本計画案について

平成10年5月26日
新キャンパス計画専門委員会委員
 新キャンパス計画専門委員会は、約3年間にわたる審議を経て策定するに至った福岡市 西区元岡・桑原地区新キャンパスの造成基本計画案について、平成9年11月4日の将来 計画小委員会に正式に提案した。その後、全学的議論の中で各部局からの意見の集約が図 られるとともに、12月6日と11日の2回にわたって、学内外の関連する分野の研究者11名から総長ヒヤリングを行った。その過程で、造成基本計画案にかかわって、農場用 水の確保難、地下水の塩水化対策、自然環境への配慮、キャンパスのオープン性の確保、 産業廃棄物の取り扱いなど幾つかの重要な課題について、一層の対策の必要性が指摘され、12月19日の将来計画小委員会で造成基本計画の年内決定を見送り、継続審議とすることにした。

 新キャンパス計画専門委員会は、それぞれの課題について、その解決に向けて以下のような調整や検討を積み重ねるとともに、これに基づいて造成基本計画案を修正するに至っ た。

一. 農場用水確保及び地下水塩水化対策について
 農場用水の確保難や地下水の塩水化対策などの諸課題については、九州大学だけで単独 で解決できる問題ではなく、福岡市をはじめ地元関係者の協力のもとで、長期的に解決すべきものであるとの判断から、関係者の協力を得るべく鋭意努力してきた。
 平成9年12月25日には、総長が福岡市長と会談し、新キャンパス計画にかかわる諸 課題について福岡市の積極的な支援を要請した。
 また、12月18日には担当副学長と事務局長が担当助役と会談し、農場用水確保と地下水塩水化対策など「九州大学の新キャンパス用地周辺の水対策について」、福岡市の特 段の対策を要請する文書を提出した。さらに、副学長及び事務局長が12月24日に福岡県副知事と会談し、これらの諸課題について、理解と支援を要請した。また、 副学長が12月18日に九州地方建設局長と会談し、新キャンパス用地周辺の水問題につ いての理解と支援を要請した。
 さらに、農場用水問題にかかわって、地元関係者にその実態を理解してもらうため、平成10年2月6日に元岡・桑原地区の移転推進協議会推進委員、水利専門検討会委員をは じめ地元の方々による原町地区の農場施設の見学会を開催するとともに、農場長、研究部長をはじめ農場関係者と懇談を行った。
 造成基本計画案の全般的な評価、地下水塩水化の可能性や地元との調整の在り方、中水 施設の安全性・安定性・経済性などの諸課題について、学外の評価を得るため、平成10年1月22日に総長ヒアリングを実施し、九州地方建設局、住宅・都市整備公団九州支社、(株)地盤工学研究所、昭和地下工業(株)、新日本製鉄(株)ら5機関から意見を聴取した。
 その後、九州大学と福岡市との間に、副学長と都市整備局長との会談、事務当局同士の折衝などを経て、平成10年2月20日に助役から副学長あてに、12月18日付けの文書に対する回答文書、「九州大学新キャンパス用地周辺の水対策について」が 提出された。
 これらの経過を踏まえ、いわゆる「水問題」について、今後、以下のように対応すると いう方向を明示し、これを造成基本計画に反映する。
1. 農場用水の確保について
(1)福岡市からの回答書において、「安定的かつ経済的供給を図るため、移転先周 辺の農業用水の効率的利用の検討、さらに総合的・広域的観点からの水対策の 検討を進めるとともに、本市において地元や関係機関との協議調整を行い、支 障をきたさないようにしてまいります。」と表明されていることから、引き続 き地元の理解を求めながら、市と連携協力して、用水の確保に努める。
(2)他方で、学内で導入される中水の一部利用、「計画中の下水処理場の処理水」 の農場用水への利用について、水量・水質両面において、安全性・安定性・経 済性の視点から引き続き検討をすすめるとともに、地元の理解を得られるよう 努める。
(3)地元からの用水確保、中水・下水処理水の利用の両面での農場用水確保の可能 性に配慮して、水田予定地について、E地区における新たな開田予定を取り止めるとともに、これをA地区に移す。
(4)これに伴い、平川池西の産業廃棄物埋立地に予定されていた畑作地域をE地区 の旧開田予定地に変更する。
(5)原町農場の移転は、農場用水の安定的確保が可能になった段階で実施する。
2. 地下水の塩水化対策について
(1)造成実施計画の策定に当たっては、周辺の地下水の塩水化に影響を及ぼさない よう最善の対策を講ずるとともに、福岡市回答書において、「本市としまして も、造成にかかる基本設計・実施設計、施工を進める中で塩水化対策を講じて まいります」と表明されていることから、九州大学・福岡市が一体となって対 応していくものとする。
(2)なお、影響を最小限に抑えるため、福岡市からの回答書にある、「九州大学の 新キャンパス用地周辺の上水道の普及を図るとともに、塩水化対策を含め水源 確保のための調査を行い、農業用水の確保に努めます」との表明の確実な実行 を引き続き要請する。
(3)万一、周辺地下水の塩水化が進行した場合をも想定して、福岡市からの回答書 にある、「周辺井戸の水位、水質等についての事前調査については、福岡市土 地開発公社において遺漏のないよう努めます」との表明の確実な実行を要請する。
二. 自然環境への一層の配慮及びキャンパスのオープン性の確保等について
 自然環境への一層の配慮及びキャンパスのオープン性の確保については、平成10年4月15日の将来計画小委員会で、新キャンパス計画専門委員会のもとに「造成基本計 画修正作業グループ」を結成して、第二次修正作業に入ることが了承された。ここでは 「1. 自然地形をできるだけ残すなど環境により配慮したものに変更する。2. 開放的 キャンパスとするため、桜井太郎丸線とキャンパスの接点について、大学の顔を明確に すること、トンネルについてもその一環として再検討する。3. 有効敷地面積について は、可能な限り現計画の面積を確保する。」、以上の3点を基本とする修正を行うものとされた。
 「造成基本計画修正作業グループ」は、この決定に基づき鋭意修正作業を行うととも に、福岡市、地元関係者、学内各部局などの意見聴取を行った。この結果、さきの農場 用水問題にかかわる農地の位置の変更をも含め、最終的な計画案を提案する。なお、こ の修正の基本的な点は、以下のとおりである。
1. 自然環境への一層の配慮について
自然地形をさらに広く残すなど環境により配慮したものに変更する。そのため、
(1)大原川上流の湧水源西側の沢部分についての大規模な埋め立て計画を変更し、 造成ラインを原案より約250m後退し、沢の大部分を残す造成とする。した がってここでの最高造成盛土の高さも約25mから約16mになる。この沢の 大部分を残すことにより、原案にあるC地区水田圃場南側を通るD地区へのアプローチ道路をとりやめ、E地区北側からD地区へのアプローチが可能となる ように配慮する。
(2)キャンパス内移動に配慮して、造成勾配を原案の2.5%程度を保つように努 める一方、自然地形を広く残すこと、入口をオープンカットにすることから、 部分的に3.5~5.0%程度の勾配を取り入れる。
(3)大原川の沢部分を残すとともに、B地区などを中心に現在の緑地地形については、さらに広くそのまま生かした修景緑地とする。
(4)この結果、土地造成による切盛土量は、原案の648万m3から520万m3に減少することになる。
2. キャンパスのオープン性の確保について
 開放的キャンパスづくりの一環として、「大学の顔」を明快にする必要から、 桜井太郎丸線とキャンパスの接点については、原案のトンネル方式を修正し、オープンカット方式に変更する。トンネル方式は、A・B地区とC・D地区などと の連結によるキャンパスの一体性に配慮したものであることにかんがみ、オープ ンカット方式にあっても、ペデストリアンデッキなどによって、交差点を介さず に人と自転車でA・B地区とC・D地区などとの移動ができるように配慮する。 また、大原川上流の沢の大部分を残すことにより、C・D地区とE・F地区との 間が地形的に隔離されることから、両地区を人と自転車の通る橋梁で結ぶなどの 対策が必要となる。さらに、桜井太郎丸線とE・F地区を結ぶ南北の学内道路を 整備することにより、E・F地区を核としてキャンパスを南北に突き抜ける動線 を確保し、E・F地区の開放性にも配慮する。
3. 有効敷地面積について
 大原川上流の沢部分を残したこと、B地区などを中心に緑地地形をそのまま生 かしたことなどにより、有効敷地面積の減少は避けられないものの、現況自然地 形の活用や新たな区域の開発などによる有効敷地の増加によって部分的に相殺され、原案の149.2haから修正案では141.6haとなる。なお、高盛土面積が減少したため、切土及び低盛土敷地は134.8haから135.1haとなり、わずかではあるが増加する。
三. 産業廃棄物などの取り扱いついて
(1)志摩町部分の残土については、地権者と福岡市土地開発公社との間に全面撤去 についての約束があることにかんがみ、その早期の履行を福岡市土地開発公社 に要請する。
(2)平川池西部分については、ボーリング調査の結果を見極めつつ、福岡市の届出 面積、廃棄物量を大幅に上回っている点を含め、その取り扱いについて福岡市 と協議する。
 なお、今後、周辺地域の開発計画との関係で土砂量バランスの緩和や環境問題につい ての新たな配慮が必要になるなど条件変化が生じた場合、基本計画に基づいた道路・圃 場などの具体的設計の進捗や関係行政機関との協議のなかで必要が生じた場合、及び技 術上やむを得ない場合においては、造成基本計画の骨格を維持しつつ、実施計画におい て部分的な修正を加えるなど柔軟に対応するものとする。
 新しいキャンパスの造成は、分散していた箱崎・六本松の二つのキャンパスと原町農 場の統合、COEに相応しい優れた研究教育施設の整備、中水施設や高度情報基盤など 新しい技術を大胆に取り入れた未来型実験キャンパスの構築など、21世紀の九州大学 づくりの核となるとともに、北部九州における学術研究拠点形成にとって欠くことのできないものである。九州大学では、こうした長期的展望にたって、福岡市をはじめ地元 との信頼関係を維持するとともに、平成10年5月7日に設立された「九州大学学術研 究都市推進協議会」を核とする周辺地域の整備計画の進展に配慮しながら、魅力あるキ ャンパスの構築に向けて真摯に取組んでいきたい。

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