九州大学新キャンパス Kyushu University New Campus
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資料集計画案関係

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九州大学新キャンパス基本構想(1次案)の概要について 平成7年10月5日作成

キャンパス用地及びその周辺の概況

1. 用地及び周辺の概況
 キャンパス用地はJR筑肥線今宿駅から北西へ約5km、あるいは周船寺駅から北北西へ約3kmに位置する。用地は、全体で275haの一団の土地である。そのうち約88%に当たる243haは福岡市西区元岡・桑原地区に、約31ha(11%)が糸島郡志摩町に、1haが前原市に位置する。用地周辺の南及び東側は沖積平野で農地としての利用が進み、北側の谷筋に沿っても農地が入り込んでいる。北及び西側の隣接地は山地及び丘陵地である。

表1. 新キャンパス用地の概要
事項 福岡市
元岡・桑原地区
志摩町
桜井・馬場地区
前原市
泊地区
合計・備考
大学用地面積 約243ha 約31ha 約1ha 約275ha
標 高
(標高差)
121m~5m
(116m)
119m~36m
(83m)
85m~40m
(45m)
121m~5m
(116m)
土地利用状況 農地 約100ha 約 7ha 約 0.1ha 約 108.1ha
山林
その他 約143ha
約 24ha 約 0.9ha 約 166.9ha
地権者数
(重複を除く)
706人 112人 7人 825人
(796人)
埋蔵文化財 包蔵地14カ所
約12.7ha
包蔵地なし 包蔵地なし 約12.7ha




都市計画区域 市街化調整区域 都市計画区域であるが未線引 市街化調整区域
農地 約100ha 約8ha 約0.1ha 2ha以上の農地転用は農林水産大臣の許可が必要
約107.1ha(H6.8.2 付農林水産大臣許可)
農業振興地域(うち農用地区域) 全域農業振興地域(約135.4ha) 全域農業振興地域(約7ha) 全域農業振興地域(約0.1ha) 農用地区域除外の県知事の許可が必要(約142.5ha)(H6.6.22付福岡県知事許可)
地域森林計画対象民有林 約92.6ha 約14.4ha 約1.0ha 1ha以上の開発は県知事との協議が必要約108.0ha
土砂流出防備保安林 約1.82ha なし なし 農林水産大臣による保安林指定解除が必要 約1.82ha
土地取引に関する監視区域 監視区域設定( 500 ㎡以上)※平成7年2月15日付監視区域解除
福岡県環境保全に関する条例 3ha以上の宅地を造成する場合は、県知事に届出(国は通知)をしなければならない。
※環境影響評価の実施が必要である。


※(図2)キャンパス用地の区域図

2. 気象
 基本的には「糸島」が特に「福岡」と大きく異なる点は少なく、概ね北部九州の気候上の特色をそのまま持つといえる。年平均降水量は、1,801mmであり、年間の平均気温は、15.2~15.8℃である。風向は、1、 2月の西北西、 6月の西南西、 7月の南西、それ以外は概ね北東の風が卓越している。月々の最大風速は、8~19m/secである。さらに年間日照時間の平均値は1,764時間である。

3. 地形及び地質
■地形
地形は、大部分が糸島平野を南に望む小起伏丘陵地で、一部東側に平野部がある。石ケ岳 (99m) から石仏山 (108m) を経て北西に延びた標高100~120mの尾根部は分水嶺をなし、石仏山の北北東約 350mの地点から金比羅山 (77m) を経て、ほぼ用地の中央部を東西に走る尾根が南北の分水嶺を構成する(図1: 地形分類図)。
図1: 地形分類図
■地形
 地質は、主に三郡変成岩類、糸島花崗閃緑岩、更新統礫層及び沖積層からなる(図2: 表層地層図)。三郡変成岩類は、西北西-東南東方向にかけて桑原地区を中心に走向分布し、用地北東部の一部を占める。西から東にかけては糸島花崗閃緑岩が分布し、用地の大部分に露出するとともに、北東部で三郡変成岩の下に貫入している。北部の谷筋には段丘礫層が、東部、南部の隣接地には沖積層が広がる。
図2: 表層地層図
 花崗閃緑岩を切る北東-南西方向に走る小規模で、落差50cm程度の正断層が認められるにすぎない。地震に関する記録は、1898年の糸島地震のみである。
4. 土質及び土壌
北東端の一部(緑色片岩)、開析谷(第四紀堆積物)を除く用地の大部分の地盤は風化花崗岩(マサ土)及び風化変成岩(赤土)である。

5. 植物相
 過去の伐採跡地に再生・成立した常緑広葉樹二次林、落葉広葉樹二次林及びため池・小河川・水路等に生育するガマ、ツルヨシ等の水生植物群落の 3種類のみが認められた。また人為的植生は、スギ人工林、ヒノキ人工林、竹林、果樹園、水田、畑地、庭園緑化樹苗畑及び水田や畑地の耕作放棄に伴う休耕地雑草群落と道路、空き地に侵入繁茂した帰化植物を主とした路傍雑草群落の 9種類の植生に区分された。なお造成地、建物敷地、水面等の無植生地を含めて合計13種類の植生に区分されている。

6. 動物相
 福岡市動物生息状況調査報告書(昭和60年 3月、福岡動物研究会編)、福岡市動物生息状況調査(鳥類)報告書(昭和60年11月、福岡動物研究会編)によると、糸島地区にはほ乳類17種、は虫類11種、両生類12~13種が生息すると推定されるが、特に貴重な動物はみられない。

7. 治水・利水
(1)ため池及び河川の水位観測
 ため池への流入水路からの流入量、ため池の貯水量、河川の流量、湧水源の湧水量等の時系列変化をみて、キャンパス用地全体の水収支を把握するため水文調査を実施している。
 水路、水門における水位は、比較的降雨に反応して変動している。ただし、かなくそ池の水路はほとんど変化がなく、また湧水源下堰の変化も小さい。湧水源下流の水門、大原川下流もある程度の変動はあるが、他に比べて小さい。
(2)治水
 キャンパス開発を行う際の治水上の留意点に、用地内を流下する大原川 (管理者:福岡市下水道局河川課) の流出量変化がある。大原川は流域面積3.13k㎡、流路長3.12kmであるが、地表面の改変により、洪水ピーク流量の増加、到達時間の短㎡縮が予測され、今後詳細な調査を行う必要がある。

 平川池放水路についても改修計画があり、基本的資料が公表されている。これによると、河口から3.12km区間及び平川池放水路0.686km区間の計画高水流量は44及び13m3/sec、流域1k㎡当りの流量 (比流量) は14.1及び23.2m3/sec/kmとなっており、平川池放水路区間の方が大きい。これは、地形的に後者の流域が急峻であることを意味する。

 キャンパス南東斜面の改変で、雨水を用地外の瑞梅寺川支川の弁天川(管理者:福岡県河川課)に排除する場合には、この川の流下能力の評価が必要となる。既存の資料による概況は以下のとおりである。

 瑞梅寺川は、背振山地に源を発し、川原川、周船寺川等を合流して今津湾に注ぐ。流域面積は47.3k?である。弁天川は瑞梅寺川の支川で、水田地帯を流下し、上流は前原市の農業用水排水路となっている。流路の延長は7.8km、流域面積は5.88k㎡である。福岡市下水道局による昭和56年の報告書では、計画高水流量は26m3/secである。

 キャンパス用地内に2ヶ所、隣接して7ヶ所の農業用水用のため池がある(図3: ため池流域と受水水田)。ため池の所有者は市及び財産区で、管理は福岡市農林水産局農業土木課が行っている。貯水容量の合計は 172,500m3で、集水面積の合計は107.6haである。一方、ため池掛かりの潅漑面積は220.1haである。減水深等、潅漑用水の評価に必要な特性量や潅漑期間が明らかになれば、必要用水量の評価が可能となる。
ため池流域と受水水田
 治水計画の作成上、どのような降雨強度を想定するかが大きな要因となる。上記河川改修計画で採用されている降雨強度は、大原川51.6mm/h、弁天川52.1mm/hで、これらの値は1/10の確率強度となっている。
(3)治水・利水上の課題
開発によって利水上直接影響を受けると考えられるのは、用地内 2ヶ所及び用地外 7ヶ所のため池である。これらのため池には潅漑用水が張り付いており、現地の利水者との間で事前に、①ため池の管理者、②ため池掛り水田、畑の把握、③利水期間や用水量等の利水の状況、④潅漑水路形状や流下能力、等の協議を行うと共に、⑤ため池への流出特性、⑥湧水源の湧出量、⑦ため池の水質等を詳細に調査しておく必要がある。

元岡地区の家庭用及び農業用地下水の利用状況の把握が必要となる。土地造成による地表面の改変は、雨水の地下浸透量及び地下水位の低下につながり、井戸枯れ、水質汚濁等の障害が発生する可能性がある。このためには事前に、①地下水の利用状況、②地下水位の分布、③地下水質等の調査が必要である。また、附属農場、水田・畑地・温室での潅漑用水などの多様な水資源確保が課題となる。

 水需要は季節的に集中する水田用水、年間を通じての上質の温室施設用水、干ばつ時に河川からの給水が困難となる畑地潅漑用水等、キャンパス内での研究遂行に欠かせない天然の水の確保についても十分な配慮をする。
8. 埋蔵文化財
 用地内の埋蔵文化財として、現在のところ14ヶ所が確認されている(図4: 確認されている埋蔵文化財)。その大半は円墳で、それらについては少なくとも記録保存が望まれる。また、桑原古墳群A群及び元岡古墳群B群の一部は消滅している。元岡池ノ浦古墳は前方後円墳であり、永久保存が求められるものと考える。なお、志摩町側用地内には埋蔵文化財は確認されていないが、現在、用地全域にわたって未確認埋蔵文化財について調査がすすめられている。
確認されている埋蔵文化財
9. 土地利用の規制及び現況
(1)土地利用の規制
現時点で、以下の規制がある(図5: 土地利用計画図)。
図5: 土地利用計画図
■市街化調整区域
 キャンパス用地は、福岡市側及び前原市側で市街化調整区域である。志摩町側は都市計画区域であるが、市街化区域と市街化調整区域の線引きが行われていない。
■農業振興地域
周辺の幅広い地域に農業振興地域の指定がある。
■森林地域
用地には森林地域の指定がある。また、用地内には土砂流出防備保安林1.16haの指定がある。
■砂防指定地
用地の北側を流れる大原川、南側を流れる下の谷川、神子の浦川、坂の谷川には、砂防指定地があり、大原川、下の谷川、坂の谷川には砂防ダムが 1基づつ設置されている。
■自然公園地域
用地内に自然公園地域の指定はない。
■土地取引に関する監視区域
桑原・元岡地区、志摩町桜井・馬場地区、前原市泊地区では、500?以上の土地取引に関する監視区域が設定されている。
(2)周辺の土地利用の現況と開発状況
用地内はほとんどが山林その他である。周辺の元岡・桑原地区では、南側の田畑から北側の斜面にかけて住宅が散在している(図6: 開発状況図)。
図6: 開発状況図
○宅地開発では、JR筑肥線沿線地域とキャンパス用地の間で土地区画整理事業が進みつつある。この中でJR筑肥線の新駅建設が構想されており、完成すればキャンパスへのアクセス交通の拠点になるものと期待される。これらが完成すれば、瑞梅寺川とJR筑肥線沿線地域との間は完全に市街化され、キャンパスとの間は僅かな農地が残るのみとなる。

○筑波研究学園都市、関西文化学術研究都市に次ぐ新たな学術研究拠点の形成を目指して、九州北部学術研究都市構想が策定されている。九州北部に集積する既存の学術研究機能を生かしながら、その展開に向けて文化・学術研究活動のネットワークの形成を図るもので、「アジア・人間・環境」を基本コンセプトとしている。この中で、福岡地域は九州・アジアをにらんだ中枢的学術研究活動の交流拠点として位置づけられており、九州大学の再編、新キャンパスの周辺整備を重要なものとしている。

○リゾート開発では、玄海レク・リゾート構想がある。

○福岡市西区今津で、今津運動公園 (19.7ha、1981~94年) 及び西部埋立場 (54.0ha、~1994年) があり、新西部埋立場 (今津、36.0ha、1995年~) が計画されている。また、用地の北西約5kmには志摩シーサイドゴルフ場がある。
10.交通施設の現況
○広域幹線道路として国道202号及びそのバイパス、西九州自動車道があり、都心の天神地区及び前原、唐津方面とを結んでいる(図7: 主要道路網図)。こうした幹線道路あるいは自動車専用道路のインターチェンジとキャンパス用地とは約3~5kmの距離にあるが、県道船越元岡横浜線及び県道桜井太郎丸線によって結ばれている。また、キャンパス内東部を通過する形で市道桑原水崎線が存在すると共に、主要地方道福岡・志摩・前原線からのアプローチも可能である。

図7: 主要道路網図
○国道202号に平行してJR筑肥線が走っており(図8: 鉄道・バス路線図 )、福岡市内の地下鉄とは相互乗入れを行っている。
図7: 主要道路網図
○JR筑肥線と平行する国道202号線に、福岡~唐津間の幹線バス路線(昭和バス)が通過しており、福岡都心~今宿間で 192本、今宿~周船寺間で 145本、周船寺~前原間で 133本/日の運行がある。
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