九州大学新キャンパス Kyushu University New Campus
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資料集計画案関係

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九州大学新キャンパス基本構想(1次案)の概要について 平成7年10月5日作成

土地利用計画

1. 土地利用計画の基本的命題
 キャンパス計画の基本理念、基本方針を実現するための土地利用計画の基本的命題を整理すれば以下のとおりである。
(1)相互に交流できるバリアフリーな環境の実現
(2)質の高い文化を創造するキャンパス空間の実現
(3)域との相互交流促進への配慮
(4)景観への配慮
2. 周辺の土地利用に関する将来計画及び構想
 キャンパス用地は、JR筑肥線や国道202号沿線と近い位置にありながら、都市的土地利用から免れている。しかし、近年になり用地近くの市街化区域で幾つかの地域開発や宅地開発等が進展し、これに伴う土地利用の変化が予想される。また、キャンパス用地の東部及び北部は豊かな自然があるが、その保全に留意しながらレクリェーション・ゾーンとして活用が図られようとしている。これらの点を踏まえると、キャンパス用地は、将来的に東南部で市街地と隣接することが予想され、また西部も志摩町や前原市の土地利用基本計画の策定において、都市的土地利用の観点から検討が進められている。従って、これらの超長期的な推移に十分配慮しながらキャンパス計画を立案する。

3. 土地利用の基本像
 用地全体はアカデミック・ゾーン、農場ゾーン、運動施設ゾーンと緑地ゾーンに区分することができ、それぞれの基本的なあり方について検討すれば以下のとおりである。
(1)アカデミックゾーン
 研究教育施設が配置される空間がアカデミックゾーンである。アカデミックゾーンの中で、中枢管理施設及び共通施設は、大学全体からの利用に便利であることが望まれ、キャンパスセンターコアを形成する。また、研究・教育施設はいわゆる大学活動の中心であり、本学の規模と東西に長いという地形的制約から幾つかのゾーンコアを設定して、生活拠点としつつ連続性を持ったアカデミックゾーンを形成する。すなわち、施設配置の全長が長くなる場合には、その両端の施設に関係する人々にとっては移動距離が長くなるが、ゾーンコアの配置は日常活動の利便性を高めるとともに、無駄のない集中的で効率的な施設配置が可能であり、また、キャンパスの賑い空間と落ち着いた研究・教育空間を確保できる利点がある。

 アカデミックゾーンは地形的要因を踏まえて敷地の中央に東西に長く展開し、連続性を保つように配する。また、東西にセンター・モールを配して、歩行を中心とするアカデミックゾーン内の移動を容易にし、また大学のシンボル性、良好な環境の創造となるゆとり空間の確保に役立てる。そして、センターモールにより繋がれ、活動の拠点となるものがキャンパスセンターコアおよび複数のゾーンコアであり、これらには共通性の高い利用施設が配置される。また、キャンパス東部地区は、周船寺、今宿方面にかけて、将来的に都市的な土地利用が進むものと考えられることから、地域と大学間を結ぶ交流施設を配置する。
(2)農場ゾーン
 キャンパスが全体として東西に長く展開することと、農場によってキャンパス施設を分断しないという観点で適地を探せば、用地の東部(桑原)、南西部(元岡)及び北西部(志摩)の3案が考えられる。

 東部については、今後都市化が進展してきた場合、それとキャンパス施設とが農場によって分断され、農場にとっても、大学の諸施設の機能的活動、地域との連携の上でも問題が残されることになることから東部案は不適格と判断する。他の2案に共通する問題の一つは、水田の用水の確保である。水田は稲作期に大量の水が必要であり、現状では周辺農地の水利権に制約されてその確保は容易ではない。結局は、用地内既存の水田に農場の水田を配置し、それにともなって一部なりとも既存の水利権を獲得することが現実的解決策である。これらの観点を踏まえれば、平川池周辺に水田を配置する案が考えられる。

 農場用地のうち、水田を除いた畑地等の配置は南西部案、北西部案のいずれも可能である。水の確保、土壌、現地形のままでの活用といった諸点を踏まえれば南西部農場案を採用することが妥当である。
(3)運動施設ゾーン
 運動施設は、課外活動、健康・スポーツ科学実習、福利厚生といった諸内容があるが、課外活動は研究・教育施設と必ずしも一体のものである必要はない。福利厚生施設として考える場合には、学生、教職員の利用の便が問題となるが、その規模は小さいと判断する。さらに、課外活動とスポーツ科学は利用時間帯が必ずしも同じでないことから、共用できるよう工夫し、効率性を高めることが望ましい。課外活動を主とした運動施設をキャンパス用地北西部に配置し、全学共通教育に必要な運動施設等についてはアカデミックゾーンに適宜配置する。
(4)農場ゾーン
 地域の自然的環境、地形的環境等を踏まえる具体的な条件として、用地南側斜面は、用地境界に沿って集落(元岡、大坂、山手)があり、また埋蔵文化財が点在するところから、自然を残し集落との緩衝地帯とすると共に、大学の緑地環境の創造、環境の保全に役立てる。また、既存のため池や河川の水量の確保、地元の井戸水利用に配慮する。
4. 土地利用計画における基本軸の設定(図10)

図10: 基本軸の構成
 学内における諸機能の円滑な連絡とバリアフリーな環境の実現のためには、東西に長い敷地に展開するコアどうしを基本軸によって連結し、基本軸をそのガイドラインとすることが有効である。基本軸は§6.1に述べた基本的命題を踏まえると共に、周辺の眺望や地形、土地造成のあり方等の検討に依拠する必要がある。
(1)第1基本軸
 地形条件からいえば、西南西から東北東に向く直線を基本軸とすることが穏当であり、これを第1基本軸として提案する。第1基本軸は、用地内に源流を発し博多湾にそそぐ大原川と概ね平行であるが、この点から基本軸に沿った動きは大原川の上流から下流への動きとして、また、用地内のどこからでも、容易に視覚的にその方向を認知することができる。用地内でいえば大坂集落裏手の小山(前方後円噴)と山手集落の裏山を結ぶ線と第1基本軸は平行となり、また桑原側山手の南斜面に対しても概ね平行となる。さらに第1基本軸は、景観構成要素である可也山-能古島-和白-立花山を結ぶ線上にのる。
(1)第2基本軸
 第2基本軸を第1基本軸の直交方向とすると、用地内では用地西端境界の尾根筋の方向に大略一致する。地形的に桑原側から元岡方向に向けて斜面を形成するように土地造成が行われるが、これとも概ね合致する。さらに第2基本軸は、元岡集落から周船寺、波多江方向に展開する農地の成形方向と一致し、その延長上に国道202号、JR筑肥線が直交する。

5. 各地区の諸条件と土地利用の方針
 上記の全体概念を踏まえながら、用地全体を、A~Gに7分割し(図11: 用地区分図)、それぞれの土地条件と土地利用との関係をより詳細に検討し、基本方針を明らかにすれば表5(区域の特徴と土地利用のあり方)のとおりである。
図11: 用地区分図
表5. 区域の特徴と土地利用のあり方
区域 面積 地形 地質 文化財 貴重植生 治水・利水 周辺条件 幹線道路との関係 土地利用のあり方
A
18ha 南東向き緩傾斜
高低差20m
沖積層
三郡変成岩
なし なし 要調整池 現状水田
将来都市的利用の可能性有
大学大通りに全面的に接道 交流施設/運動施設
B
56ha 北東向き傾斜
高低差20m
三郡変成岩
花崗岩
南西斜面に古墳群 なし かなくそ池の移設可
要調整池
北側水田
南側水田及び一部集落
北側に大学大通り 、
西側に県道(立体的)
アカデミックゾーン/運動施設/散策の森
C
49ha 北東向き斜面
南向き斜面
高低差30m
花崗岩
一部沖積層
南斜面に
古墳群、
山頂に
前方後円墳
集落際に広葉樹二次林等 大原川
要調整池
北側水田
南側集落有
北側県道、大学大通り
東側県道(立体)
アカデミックゾーン/共同利用施設/特殊研究施設/歴史散歩の路
D
42ha 北東向き斜面
高低差20m
花崗岩 なし 西側山に広葉樹二次林 湧水源の保全
大原川
北側県道、大学大通り アカデミックゾーン/泉の森
E
34ha 北東向き斜面
高低差30m
花崗岩
段丘堆積物
なし ガマ群落 農場用水の確保 北側県道 アカデミックゾーン/農場(水田) /特殊研究施設
F
30ha 北向き斜面
高低差30m
花崗岩 なし なし 要調整池 山林等 北側県道、西側県道 運動施設/アカデミックゾーン/特殊研究施設
G
47ha 南向き斜面
高低差40m
花崗岩 古墳群 なし 二股池の移設可
農場用水の確保
西側畑地
東側集落
南側県道 アカデミックゾーン/農場ゾーン
※貴重植生は必ずしも保存が強く求められるものでない。

6. 土地利用計画案
 土地利用の基本的命題や、基本像における検討結果をふまえ、土地利用計画を図12(土地利用計画図)のように提案する。東西に長く延びる中央部にアカデミックゾーンを配置し、系どうしの相互交流を可能にするものである。また、西南部と平川池付近にに農場ゾーン、北西部に運動施設ゾーン専用地区を配置し、キャンパス用地の南側及び北側、敷地周辺部には緑地帯を設けて豊かな緑に囲まれたキャンパス空間を演出する。さらにアカデミックゾーンの東側A地区には、地域との交流を配慮した交流エリア、及び運動施設ゾーンを配置する。
図12:土地利用計画図

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