九州大学新キャンパス Kyushu University New Campus
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資料集計画案関係

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九州大学新キャンパス基本構想(1次案)の概要について 平成7年10月5日作成

土地造成計画

1. 造成計画の基本的考え方および留意点
(1)造成規模について
  • 小現地形条件を生かして、周辺環境に配慮しつつも、充分な有効敷地面積を確保できるように土地造成計画を立案する。
(2)大学施設との関係
  • キャンパス内に整備される各種教育・研究施設および共用・共通施設は相互 に有機的連携を図る。
(3)地形との関係
  • 市境には最高121mの尾根が形成され、また東西に小山が存在するほかは、谷筋は耕地による開発が進み、それらの間に尾根が入り込む地形である。これ らの地形条件を十分配慮すると共に、自然環境に配慮した土地造成を行なう。
  • 用地南側の集落は生活用水として井戸水を利用しており、また、農地は用地 南側、東側周辺に展開し、地表水、地下水の双方を利用している。従って、 分水嶺や水利権に配慮する必要がある。
(4)土質・地質条件とのとの関係
  • 用地内に多数点在するこれまでの耕地造成に伴う切り崩し箇所は、風化花崗 岩であり、基岩の露出は見られないことから、防災上の工夫を行なえば20m 程度の切り土は十分可能である。
  • 用地内の大部分に広がる風化花崗岩(マサ土)は、盛土材として申し分なく、 ある程度の高盛土の出現があっても十分対処可能である。
(5)湧水源、河川及び周辺ため池について
  • 大原川上流にある幸の神湧水源は、大原川の大切な水源であり、大坂の池、 大久保池、かなくそ池の水源、また平川池の予備水源であり、その維持が強 く求められている。このことから、現状のまま保全し、湧水量を維持する。
  • 大原川も基本的に現況を維持する必要があり、それらの水量の確保が求めら れるが、平川池より下流は計画に合わせて一部河道付け替えも考える必要が ある。
  • キャンパス用地に隣接する平川池、大坂の池、神子の浦池、大久保池、米栗 池及び立浦堤は用地外であるが、その集水区域がキャンパス用地内にあり、 配慮する必要がある。
(6)キャンパス内のため池の扱いについて
  • 「かなくそ池」と「二股池」はキャンパス開発地域の中程に存在するところから、そのまま保全することは、水と池の維持管理の上での所有者の不便、安全管理、土地利用、施設配置上での制約、水量、水路の確保等の問題があり、キャンパス周辺の適切な位置に移設する方向で検討する。
(7)埋蔵文化財の扱い
  • 大坂集落背後の前方後円噴等は南斜面に位置するところから、できればそのままキャンパス計画に活用し、潤いある、歴史性ゆたかなキャンパス計画と して特色づける。
(8)周辺との関係
  • 丘陵地の南斜面裾に用地境界に沿って元岡、大坂、山手集落があり、また埋蔵文化財が点在することが確認されていることから、南斜面はできるだけ現 地形を生かす工夫をし、緑地として自然環境の保全に努めることが必要となる。
  • 用地は、概ね県道、市道、農道に取り囲まれているが、基本的にはこれらの道路をベースにして造成計画を考える。

2. 土地造成計画の設計条件
(1)緑地に関する条件
■緩衝緑地
用地の外周を取り巻く緑地である。用地の周辺からの景観上重要 な緑地となり、緑の連続性を持たせ、用地と周辺地域との緩衝機能を合わせ 持ち、また、周辺地域に対する水源涵養としての機能をも果たす。
■保全緑地
自然環境の保護と生活環境の確保を目的とする緑地で、一定水準 以上の集団として保全するものである。森林法においてその基準値が設定さ れており、開発面積の25%程度は必要である。
(2)現況の土地利用による条件
  • 用地南側は元岡地区に接しており、現況地形も南下がりとなっているため、境界近くまで造成することは、景観の保全が図れず、また、工事における直接の影響も考えられることから、まとまった保全区域の確保が必要と考える。
(3)土量バランスの確保
残土の搬出は、運搬経路沿線住民の同意の取得、地域住民に対する生活環境の確保、道路整備と運搬専用路線の確保等が必要となること、また用地内における土量移動においても同様の問題が発生することと、工区ごとで工事が完結しないと問題が生じるため、各工区ごとに土量バランスを確保することが必要である。
(4)土質による条件
土工計画における土量変化率は、これらの土質から0.95~1.30と考えられるが、基本計画を行うに当たっての平均土量変化率は1.0程度と考える。また、A地区の水田面は、地表から10m程度までがN値0の軟弱地盤であり、高盛土には適さない土質であるため、造成計画にあたっては十分な検討が必要である。
(5)河川による条件
河川の流域は、水崎川流域、大原川流域および杉山川流域に分割されている。次の理由により造成による現況流域の変更は、行わない。
  • 流域変更により流域が拡大した場合、河川による災害が増大することになり、 損害賠償等の訴訟が起こされた場合、行政における対応困難なものとなる。
(6)農業用ため池による条件
開発によるため池への影響を最小限に押さえるためには、現況のため池流域を変更することのないように計画する必要がある。なお、開発によってため池容量が減少した場合、現況ため池の嵩上げ、浚渫、掘削等の対策が必要となる。
(7)排水計画と調整池計画
調整池の必要容量は、既存資料及び現地補足調査等により、現在の河川流下能力、最小比流量地点を求め算出する。最小比流量は水崎川が0.007m3/sec/ha、大原川が0.141m3/sec/ha、杉山川が0.079m3/sec/haであり、水崎川が他に対して極めて小さい。
3. 造成計画の方針
 造成計画にあたっては、以上の設計条件に加え、次の事項を考慮して行う。
(1)有効敷地面積の確保
有効敷地面積については、造成計画上の設計条件を遵守する中で計画区域面積の275haを有効に利用し、確保する。
(2)工期と経済性
段階的移転に対する移転年次計画を考慮し、工区ごとに造成の完成が可能となるように工区ごとに土量バランスを確保し、また完成した各造成面に進入道路が容易に取りつく計画であり、経済性に優れたものとする。
(3)土工量の抑制
現況地形に優しく、残地森林との融合を図る上から造成土量の発生を抑え、また、大規模な土量移動を行わないものとする。
(4)造成勾配
造成勾配は、地区内の移動が自転車において可能となるように2~3%を基本として計画するが、現況地形等の制約により2~3%の確保が困難な場合は、5%を上限として区間を限って行う。
4. 比較検討3案
土地造成の基本型として3案が提案できる。
1. 大規模造成案 本造成案は箱崎キャンパスの平坦性と連続性を新キャンパスに盛り込む考え方であり、計画全地区相互での大量、長距離の土工を行うものである。一団の造成盤は地区外からA、B、C、Dまで連続し、東西方向には2~3%、南北方向には5%前後の勾配で展開する。
2. クラスター造成案 本案は、土工量を抑えるために、尾根部の山頂部を切土造成し、中腹の自然斜面を残し、尾根間の谷部を盛土造成するもので、造成盤が自然斜面に囲まれ、段丘状に展開する。大規模造成とは対称的に、本案では、林の中にクラスター的に施設配置がされることとなる。
3. 中間案 中間案では、B、C、Dの造成中心部を大規模造成の方式で造成し、東西方向は5%あるいはそれ以下の勾配の道路で結ぶ。また、地区間にまたがる土工を避け、土工量の軽減を図るため、中心部周辺はクラスター的な造成とする。

5. 土地造成計画案
 3案とも、環境面や周辺集落との関係について十分配慮したものであるが、経済性、施工性、連続性、有効面積、移転期の中で生じるであろう施設計画の見直し等についても、中間案が現実的であると判断し提案する。

 アカデミックゾーンはA、B、CDEの3つの造成盤に大きくわけられる。A、Bではそれぞれの地区内で土工バランスをとり、かつ、Aの低地の軟弱地盤上に高盛土を施工できないため、A、Bの造成盤の間に10m~15mの高低差を生じ、盛土法面が表れる。B、CD間は県道桜井太郎丸線で分割される。

 水崎川の流下能力が極端に小さいので、低地の大坂池上流とA、Bの低地に大容量の調整池を必要とし、アカデミックゾーンが必要とする有効敷地面積はほぼB、CDの高台に求めなければならない。この高台の造成中心部では、自在に移動できるように、平坦性を確保した造成を計画する。DとGを結ぶ学内道路の線形に留意し、同様に、DとEとが接する湧水源の谷については湧水の減少、枯渇のないよう最大限の注意を払う必要がある。

 以上にもとづく造成計画案が図13:造成計画図である。
図13:造成計画図
6. 造成計画の課題
今後の造成計画、設計に対する検討として下記の点に注意を要する。
(1)建築計画、道路計画等の進捗に伴う造成面の調整。
(2)埋蔵文化財調査に伴う造成手法の検討。
(3)水利権協議に伴う農業水利施設の改廃の検討。
(4)地下水影響調査に伴う湧水源後背地の造成の検討。
(5)河川協議に伴う排水計画、調整池の整理。
(6)地域計画、地元協議に伴う地区外との接近性、連続性の検討。
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