RESEARCH

令和元年度 「i-都市再生」モデル調査の紹介

内閣府地方創生推進事務局が令和元年6月に募集した「i-都市再生」モデル調査に、九州大学キャンパス計画室をリーダーとするリジョナルデザインチームは選定され、モデル調査を開始しました。テーマは「地方における学術研究都市構築のための情報共有とシミュレーション ―プロトタイプとしての実証実験キャンパス活用―」で、九州大学伊都キャンパスを北に周辺市街地を含む九州大学学術研究都市のコアゾーンを対象範囲としています。

*内閣府地方創生推進事務局 「i-都市再生」モデル調査に係る提案の選定について

調査対象範囲

モデル調査のフロー

令和元年度の調査は、8月に選定され調査を開始し、①データの収集と3Dモデル化、②ARを活用した都市デザインシステムの開発、③体験会でのデモンストレーションと評価、④システムの改良(拡張・応用)までを翌令和2年3月まで実施しました。
調査では、「i-都市再生」および技術仕様案i-UR1.0の普及を念頭に、市販のアプリケーションソフトの活用、学生の参加、など実用化が近いシステムを目指して取り組みました。

調査フロー

九州大学伊都キャンパスの3Dモデル化

九州大学伊都キャンパス内の198の建物をできるだけリアル感を出るように、壁・屋根にはテクスチャ(写真)を貼り付けた立体モデルを作成しました。作成作業は、九州大学が所有するCADデータをもとに、九州大学院人間環境学府の学生が中心になって、3Dモデリングソフト「3dsMAX」(Autodesk社)を使い、約2ヶ月間で完成させました。3dsMAXの使用はほぼ初めてという学生が多かったため、専門家(パナソニック・エンジニアリングセンター)の指導のもとで作業しています。将来は、熟練した学生が一般市民や地域の子ども達とともにモデリング作業をおこなえるよう、システムの拡張を目指しています。

作成された伊都キャンパスの3Dモデル

一般市街地の3Dモデル化とキャンパスと合体させた都市モデルの作成

キャンパス以外の一般市街地の建物は、都市計画基礎調査のデータ(シェイプファイル)から、3Dコンセプトデザインソフト「InfraWorks」(Autodesk社)を使い、自動で生成しています。一般市街地の建物は、屋根は平らな箱形状でテクスチャ(写真)も貼っていない単純なモデルとなっています。

作成した一般市街地の3Dモデル

一般市街地の3Dモデルを3dsMAXに取り込んで、キャンパスの3Dモデルと合体させて、全体の3D都市モデルを作成しました。

合体して出来上がった3D都市モデル

都市情報の3Dモデル化

VRやARで立体的に見せる都市情報(ハザードマップ・避難所、人口・交通・利用可能用地・教育環境など)をInfraWorks(Autodesk社)を使用して3Dモデルを作成しました。データソースには、都市計画基礎調査や行政のオープンデータなどのシェイプファイルを使用しています。

作成した立体都市情報

ARを活用した都市デザイン調整システム

3Dゲーム開発エンジンとして世界的に使われているUnity(Unity社)を使用して、タブレットPCの画面上に3Dモデル化した都市情報が映し出すAR(拡張現実)を作成しました。タブレットを手にする人(被験者)に3D都市情報をリアルに感じてもらえるよう、大判の衛星写真をシートにして、タブレットを衛星写真にかざすと、その衛星写真の一部がARマーカーになって、3D都市情報が現れる(タブレットに映し出される)システムです。

ARシステムのイメージ

ARシステムの仕組み

令和2年1月に開催した体験会では、多くの体験者が興味深く手にしたタブレットを操作していました。体験会での評価をもとに、その後、システムの改良、より多くの都市情報のデータ化に取り組みました。

体験会でのデモンストレーションの様子